『古本迷宮』 喜多村拓 24-13
「北村古書店」は青森にある古書店です。前半では北村さんがこれまで経験してきた古書店あるある満載のエッセイが、後半はファンタジーというかホラーというか、古書店にまつわる不思議なお話が収められています。
古書店には古書が大好物であるおじさんたちがやってきます。そしていろんなことを言っていくのです。本の値付けがおかしいとか、わたしの蔵書はこの店よりも多いとか、こんなすごい本を持ってるんだぞ、とか。
本を処分しようと思うので、家まで見に来てくれないかと頼まれることもあります。でも、実際に本を売るという話にならないので、同業者の人と話をしてみると、どうやらあのオヤジは蔵書を自慢したいだけで、いろんな古書店で同じことをしているということがわかったり。
自分のコレクションに固執して、奥さんから疎まれていたり、自分の部屋に本が収まらなくなってしまったり、困った古書愛好家の「あるある」が満載です。
売れれば本、売れなければ紙屑
ご本人は凄い蔵書だと豪語していたのに、処分しようと見積を頼むと二束三文ということがとても多いのです。ご本人が亡くなってしまった場合、奥さまは「タダ同然であろうと、なくなって清々したわ」ということになるのですが、ご本人が存命の場合は、そんなはずはないとジタバタすることがよくあるというのはねぇ。
「ブックなんとかでは新しい本しか引き取ってくれないから」という話は、確かにそのとおりです。マニュアルに書かれた条件に合ったものしか引き取ってくれません。それ以外の本は廃棄になってしまいます。廃棄される本の中に凄い本が紛れている場合があります。北村さんは買い取りたいと頼むのですが、会社の規定で廃棄するしかないのですと言われて、ガックリと肩を落とす北村さん。
北村さんのボヤキや、ため息や、叫びが聞こえてくるような文章に「だよねぇ」とか「そうなんですかぁ」と声を掛けたくなる自分に驚いてしまいます。
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