『本を贈る』 笠井瑠美子 他 24-11
本を贈る
編集者 島田潤一郎(夏葉社)
装丁家 矢萩多聞
校正者 牟田都子
印刷 藤原隆充(藤原印刷)
製本 笠井瑠美子(加藤製本)
取次 川人寧幸(ツバメ出版流通)
営業 橋本亮二(朝日出版社)
書店員 久禮亮太(久禮書店)
本屋 三田修平(BOOK TRUCK)
批評家 若松英輔
三輪舎
この本には本に関する様々な仕事をしている方が登場します。
ひとり出版社(夏葉社)の島田潤一郎さん以外、初めて知る方ばかりと思っていたら、牟田都子さんは「へろへろ」の校正をされた方だったのですね。校正という仕事の奥深さを垣間見て、そこまでするのかと驚きました。
装丁家の矢萩多聞さんは、装丁のお話も面白かったのですが、登校拒否になってしまった娘さんの話が印象的でした。友達と遊ぶのも、本を読むのも大好きなのに、毎日学校から宿題を出されるのが嫌で、学校へ行きたくないというのです。だったら相談してみようと、多聞さんが担任の先生と面談した時の会話が恐ろしいのです。
「(宿題のような)嫌なことを我慢できない子は、コミュニケーション能力に欠けるんです」と言われてびっくりした多聞さんが先生に「問題があったときに娘に理由を聞きましたか?」と聞いたら、何もしていないのです。「コミュニケーション能力がないのは先生の方じゃないか!」「嫌だと思ったから嫌と言っただけなのに、その理由も聞かない先生がいる学校じゃ行きたくないって思うのは無理ないな」と思う多聞さんです。
こういうちゃんとした考えを持っている多聞さんが関わった本が450冊を超える(この本出版時)というのです。ぜひ多聞さんの本を読んでみたいと思います。
朝日出版社の営業、橋本亮二さんが、リブロ池袋本店閉店日に、本を届けてもらえないかと頼まれて「断片的なものの社会学 岸政彦著」を直接届けに行ったという話からは、この店は今日で最後だけど、だからこそ求められる本を届けなければならないという使命感を感じました。
本を作る人、運ぶ人、売る人、読む人、それぞれの思いが詰まったこの本から、本に携わる様々な仕事のことを知ることができました。個人書店が減り続ける昨今ですが、ブックトラックで直接本を届けている三田修平さんがおっしゃるように、本に直接触れることで人と本の新しい出会いが生まれるのだと信じたいです。
3037冊目(今年11冊目)
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