『日本の歪み』 養老孟司 茂木健一郎 東浩紀 24-45
書く日本語と話す日本語が違うことを教育課程できちんと教えるべきだと、昔から思っています。しゃべるように書いてはダメだし、書いたまましゃべってはダメなんです。意図的に使い分けられるようになると、みんなもっと日本語が上手くなるはずです。(東)
国会答弁がまさにそうですよね。官僚の書いた原稿を読んでいるだけで対話になっていない。(茂木)
中略
今の話を別の言葉で言えば、日本語は第三人称を作れていないという話になる。客観的記述に向いた日本語が作れていない。(東)
どういうことですか。(茂木)
日本語の張り紙って文章が長いですよね。「No Smoking」で済むことは、「ここでは煙草はご遠慮ください」になる。「ここは禁煙である」と書くことが失礼に当たるように感じてしまうからです。事実をそのまま述べると失礼になるというのはすごく変なのですが、日本語ではそういう感覚がある。(東)
これは、わたしがいつも感じていることです。「JR○○線が止まっている」と言えばいいところを「JR○○線の運転を見合わせている」というようなわかりにくい表現がとても多いのです。「ご遠慮ください」とか「慎んでください」とか、丁寧なことも大事かもしれないけど、そんな面倒くさい表現をしなくてもと思うことがよくあります。日本語ネイティブではない人が読むには、とてもわかりにくい表現が町に溢れていていると思うのです。
日本では学芸会モデルがコンテンツ業界における成功モデルに組み込まれたというだけでいいんじゃないかな。(東)
ジャニーズとか吉本とかね。本当に学芸会です。(茂木)
ハハハ、こういうことをハッキリ言ってくる人がいてヨカッタ!
もっと歌が上手い人も、演技が上手い人も、きれいな人も、面白い人もいるのに、どうしてあの人たちが売れているのか?それはジャニーズ問題ではっきりしたじゃないですか。大したことない芸でも、それが素晴らしいってことにしてしまえばいいだけという成功モデル。もういい加減にやめて欲しいです。
「みんなで決める」といっても「偉い人がみんなに意見を聞く」だけではダメなんです。自分たちで決めないと。けれども日本では、みんなでわいわい言ったあと、「偉い人」が決めて丸く収めてくれるのを民主主義だと思っているふしがある。ある意味では権威主義的な国だとも言えますよね。(東)
これが日本の現実!
日本がなんでも「みんな」であるのは、日本の民主主義の歪みと関係していると思います。平等主義的で、他人の視線を気にして、熱しやすく冷めやすい。誰かを一斉に叩いて、その人が消えたらウソのように忘れる。もはや指摘しても意味がないくらいに繰り返された光景です。(東)
ぼくは最近になって、この国で生きていくのには目立たないことしかないんだとわかってきました。(東)
何か標的を見つけると集中砲火するくせに、あっという間に飽きちゃって、別の目立つ何かを叩きに行くのって、とっても嫌な感じがします。叩かれないようにするには目立たないしかない。テレビやマスコミに取り上げられないようにするしかないんです。
日本の法律っておもしろくて、現状が違法になるように作っている。現状よりも厳しいルールを作ることで、何か引っ掛けようと思えばいつでも引っ掛けられるような現況にすることで権力を維持している。(養老)
よくわかります。(東)
スピード違反がそうですよね。実際にはみんなスピード違反で走っているから、捕まえようと思えば、いつでも捕まえられる。(養老)
たしかにそうですね。でも管理するために現状を違法にしてるって、すでに歪んでいる。イノベーションが起こりにくい風土を、自ら作ってしまっている。(茂木)
これは日本の歪みを上手く説明している例だなと思います。こういう現実を意識している日本人ってどれだけいるんだろう?日本って国のズルいルールがそこかしこにあって、逃げ出したくなる人が増えてもしょうがないな。
トーマス・フリードマンは、別の本で「マクドナルドが進出した国同士は戦争することはない」と書いています。ところが今回の戦争では、マクドナルドの方がロシアから撤退してしまった。マクドナルドがある国同士が戦争しないのではなく、戦争が起きるとマクドナルドが撤退するだけだった。なるほどなと思うわけです。(東)
こういう視点で考えたことなかったなぁ。
少子高齢化をマイナスの意味でしか捉えていないのが時代遅れなように感じます。少子高齢化は一種の自然現象だから、素直に受け止めたらいいも悪いもないはずで、悪いと思うのは、経済中心にしか見ていないかrです。そういうもんだ、と思わなきゃいけないのに、何とかしようとするのがおかしいのではないか。その手の話は、どうも知恵が足りない気がします。(養老)
今更子どもを増やそうったって、そう簡単にいかないのは分かり切った話。それよりも高齢者の方に働いてもらうのか、お金持ちなら税金をたくさん払ってもらうとか、無駄な医療は行わないとか、そちら側を考えるべきですよね。でも、そう言うことを決めるのは高齢者側の人だから先に進まないってことなんだろうなぁ。
(大規模な震災などが起きた時)被害によっては、いまのような生活を続けるのは無理になります。小さな自給自足の集団を日本中に置いて行くしかない。でも島根県や鳥取県の可住地面積あたりの人口密度がヨーロッパと同じくらいで、日本では過疎と言われている地域でも世界基準で見たら標準です。つまり人口もかなり減らないと、ちいさな自給自足の社会はやっていけないかもしれない。(養老)
人口が減った時にどうするか?日本は真剣に考えてないよね。
同性婚でも夫婦同姓?(茂木)
これは興味深い問題!
3071冊目(今年45冊目)
« 『週2だけど正社員です! 』 いとうかよこ 24-44 | トップページ | 『ぼくは日高本線が大好きだった』 伊藤未知 24-46 »
「新書」カテゴリの記事
- 『カーストとは何か インド「不可触民」の実像』 鈴木真弥 25-20-3416(2025.01.24)
- 『江戸の貧民』 塩見鮮一郎 25-13-3409(2025.01.15)
- 『世界は経営でできている』 岩尾俊兵 25-6-3402(2025.01.07)
- 『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』 三宅香帆 24-366-3392(2024.12.26)
- 『生物と無生物のあいだ』 福岡伸一 24-360-3386(2024.12.20)
「日本の作家 あ行」カテゴリの記事
- 『地獄へ行こか青江へ行こうか』 青江忠一 25-17-3413(2025.01.20)
- 『ヒストリエ11』 岩明均 25-9-3405(2025.01.11)
- 『世界は経営でできている』 岩尾俊兵 25-6-3402(2025.01.07)
- 『崑ちゃん・鎌田式老化のスピードを緩める最強の習慣!』 鎌田實×大村崑 25-4-3400(2025.01.05)
- 『新書へのとびら 第1部 現代新書はいかにして現代新書になったのか』 魚住昭 24-347-3373(2024.12.07)
「日本の作家 ま行」カテゴリの記事
- 『複雑な彼』 三島由紀夫 25-14-3410(2025.01.16)
- 『まいまいつぶろ 御庭番耳目抄』 村木嵐 25-2-3398(2025.01.03)
- 『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』 三宅香帆 24-366-3392(2024.12.26)
- 『夜の金糸雀 おくり絵師』 森明日香 24-353-3379(2024.12.13)
- 『すごい音楽脳』 宮崎敦子 24-342-3368(2024.12.02)
「日本の作家 やらわ行」カテゴリの記事
- 『みえるとかみえないとか』 ヨシタケシンスケ 24-368-3394(2024.12.28)
- 『異次元緩和の罪と罰』 山本謙三 24-349-3375(2024.12.09)
- 『がいとうのひっこし』 山田彩央里 、山田和明 24-318-3344(2024.11.08)
- 『おしごとそうだんセンター』 ヨシタケシンスケ 24-319-3345(2024.11.09)
- 『昔はおれと同い年だった田中さんとの友情』 椰月美智子 24-301-3327(2024.10.22)
« 『週2だけど正社員です! 』 いとうかよこ 24-44 | トップページ | 『ぼくは日高本線が大好きだった』 伊藤未知 24-46 »
コメント