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『人新世の「資本論」』 斎藤幸平 24-84

Jinsinnsei

人新世の「資本論」
(ひとしんせいのしほんろん)

斎藤幸平(さいとう こうへい)

集英社新書1035

新書大賞2021 受賞

人類の経済活動が地球に与えた影響があまりに大きいため、ノーベル化学賞受賞者のパウル・クルッツェンは、地質学的に見て、地球は新たな年代に突入したと言い、それを「人新世(ひとしんせい)」(Anthropocene)と名付けた。人間たちの活動の痕跡が、地球の表面を覆いつくした年代という意味である。(はじめに より)

人類は自然を支配しようとした結果、地球環境を取り返しのつかないような形で大きく変えてしまっているのである。そして、もはや人類にはどうしようもできないような危機的状況に突き進もうとしているのだ。P64

資本主義は「生産性の罠」から抜け出せず、経済成長を諦めることができない。そうすると、今度は、気候変動対策をしようにも、資源消費量が増大する「経済成長の罠」にはまってしまう。P70

 地球のためにSDGs(エスディージーズ)をという掛け声があちらこちらで聞かれ、ゴミの分別とか、エコバッグとか、食品ロスの減少、省エネなどを考えようという取組は、もちろん大事なことだけど、それでどれだけの効果があるのか?と考えると、焼け石に水な気がしていました。この本を読んで、わたしのそういう感覚は正しいと確信しました。

 個人がいくら節約などの努力をしたところで、大企業が無駄なものを作り続ける限り、状況は悪くなる一方です。コロナ禍で自然環境が良くなったという時期がありました。でも、それがなくなったら、あっという間に元の世界に戻ってしまいましたし、戦争まで始まってしまいました。こんな地球に誰がした?と考えてみると、その原因が「資本主義」であるというのは間違いないでしょう。

 

絶えず競争にさらされる現代日本社会では、誰も弱者に手を差し伸べる余裕がない。ホームレスになれば、台風のときに避難所に入ることすら断られる。貨幣を持っていなければ人権さえもはく奪され、命が脅かされる競争社会で、相互扶助は困難である。P135

水力という持続可能なエネルギーはわきに追いやられた。石炭が主力になって生産力は上昇したが、町の大気は汚染され、労働者は死ぬまで働かされるようになった。そして、これ以降、化石燃料の排出する二酸化炭素は増加の一途をたどっていったのだ。P242

意志にかかわりなく、暇もなく、延々と働くという点では、労働者も奴隷も同じなのである。いや、現代の労働者の方が酷い場合すらある。古代の奴隷には、生存保証があった。替えの奴隷を見つけるのも大変だったため、大事にされた。
それに対して、資本主義の元での労働者たちの代わりはいくらでもいる。労働者は、首になって、仕事が見つからなければ、究極的には飢え死にしてしまう。
マルクスはこの不安定さを「絶対的貧困」と呼んだ。P253

必要のないものを作るのをやめれば、社会全体の総労働時間は大幅に削減できる。労働時間を短縮しても、意味のない仕事が減るだけなので、社会の実質的な繁栄は維持される。それどころか、労働時間を減らすことは、人々の生活にとっても、また自然環境にとっても好ましい影響をもたらす。P303

 現代の労働者は奴隷よりも酷い状況にあるということを、認めざるを得ません。これから、どうやって労働者が生きていきやすい世界にしていくのか?資本主義にそれは可能なのか?考えれば考えるほど頭が痛くなる問題なのです。

3110冊目(今年84冊目)

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