『人は、なぜさみしさに苦しむのか?』 中野信子 24-78
家族だから、パートナーだからわかり合えるという、なんの保証も根拠もない思い込み P42
同級生、同僚、といった身近な人と信頼感が持てないとき、他人は家族やパートナーがいるじゃないかと言います。でも、そういう人たちと信頼感を持てないというのは、よくあることです。他人よりも身内の方が分かってくれないということを変なことだという人もいます。でも、家族だからこそ生まれる「わかり合えない」ことがいろいろとあり、それこそが人間の悩みの本質であったりもするのです。
さみしいという感情は、「弱いもの」「繊細なもの」という印象を持つかもしれませんんが、ときに非常に強い攻撃性をもって能われるという現実を、改めて考えてみる必要があります。P201
自分は孤独だ、それはいけないことだ、悲しいことだ、という沼に落ちてしまったら、それはとてつもなく苦しいことです。人間は弱い生き物だから一人では生きられません。その感情をどこへ向けるのでしょうか?
ある人は、その感情を自分自身へ向けます。自分がつまらない人間だから、他人より劣るからと考えて自分を責めるのです。エスカレートしていくと、自傷行為をしたり、依存症になったり、自分の家をゴミ屋敷にしてしまったりするのです。
また別の人は、それは他人や社会のせいだと考えます。その気持ちが「ヘイト」として発せられる場合もあるし、他者への暴力として発せられる場合もあります。
さみしさは人間を変えてしまいます。生きているのが嫌になってしまったり、自分がどんな人間であったのかを忘れてしまったりするのです。
この本を読んでいる間、いろんな「さみしいこと」を思い出しました。亡くなった友人、遠くに住んでいてもう二度と会えないだろう友人、もうなくなってしまった実家のこと。思い出しただけで涙がこぼれることも、そんなこともあったなぁという程度に薄まった思いも、すべてわたしの心の中に残っているんだなぁって思います。
とてもつらいさみしさに襲われたときに、あの人に話を聞いてもらいたいなぁと思える友人がいるわたしは、幸せなのかな。
3104冊目(今年78冊目)
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