『夢を叶えるために脳はある』 池谷裕二 24-92
わたしたちの心臓が動いているのも、記憶も、運動も、すべてが脳によって制御されているのです。でも、それを意識することはほとんどありません。でも、脳があるからこそ生きているのだし、動けるのだし、考えることができるのです。
目が「前」についているのか、目があるから「前」なのか P67
たとえば「前」という概念1つとっても、なぜそうなのかをキチンと説明することができません。そんな風に、そんなこと当り前だろうと思っていたことが、決して当たり前ではないということがたくさんあるのです。
感受性期というものがあってね、発達の過程の、ある一定期間に視覚経験をしなければ、一生見えない。それが、視覚障害者の開眼手術に置いて、大きな問題となる。大人になってから開眼手術をしても、完全な「見え」を手にすることはできない。相当にトレーニングしても、やはりむずかしい。僕らもそうだよね。英語のRとLの聞き分けや、絶対音感の習得は、ある年齢を超えると一気にむずかしくなる。これと同じことで、開眼手術は若いころに行った方が効果が高い。P146
あるものが最初に見えてきた時には小さかったけれど、近づいていくと段々大きく見えてくるとか、黒く見えている部分が、黒いものなのか影なのかとか、そういうことはすべて経験値なのです。赤ちゃんの時から時間をかけて経験を積み重ねたからこそ「見える」のだということを、ほとんどの人は分かっていません。
ですから、大人になってから見えるようになった人にとって、そこが大きな問題になるのです。
「46年目の光 視力を取り戻した男の奇跡の人生」のマイクもそういう人だったことを思い出しました。手術して見えるようになったけれど、それが黒い物体なのか影なのかが分かりません。人の顔の違いを認識することもできません。だから視力を取り戻した後も、相手が誰なのかは声で判断していました。この状態が想像を絶する苦痛なのだそうで、視力を得てから自殺した人が大勢いるのです。
脳は記憶を通じて時間を認知している。つまり、記憶がなければ時間はない。もし記憶がどんどんと消えてしまうような状態だったら、もはや、時間を認知できない。P160
認知症が、まさにこの状況なのです。記憶が消えたら、時間の認識もなくなるわけです。認知症のテストで今日の日付を聞かれます。自分の生年月日は答えられても、今何歳なのかは分からない。今が昼なのか夜なのかもわからなくなるのです。
自分がこう考えたと思うことが、必ずしも自分の考えではない可能性とか、自分の脳のクセとか、脳は分からないことだらけです。だからこそ面白い脳のことを、こうやって知っていくことは素晴らしいことなのです。
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