『歌わないキビタキ』 梨木果歩 24-82
このエッセイが書かれたのは、2020年6月から2023年3月までの間です。コロナ過によって行動を制限されたこともあり、八ヶ岳の別荘で執筆活動をされていたようです。自然の中で鳥の声を聞き、花が咲くのを楽しみにし、山菜やきのこを味わう生活は、都会でキリキリしながら暮らすよりも、心の平穏が保たれていたようです。
とはいっても、お母様の介護があったり、ご本人の体の具合が悪かったり、大変な時間も過ごされていたようです。
お友達のSさんが認知症になり「私が私でなくなる。こんな残酷な病気ってある?」と問われて、返す言葉がなかったというエピソードが登場します。この文章を読んでいて、わたしの母が言っていた「自分がわからなくなるのが怖い」という言葉を思い出しました。
コロナ過という閉塞感のある時期から、少しずつ元の世界に戻れるかもしれないとみんなが期待を持ち始めた頃、とんでもない事件が起きました。ウクライナ戦争、そして安倍氏銃撃事件。どうして人間というのはおろかなことばかりしでかしてしまう生き物なのでしょうか。
自然の中で生きる生き物たちは、あんなにも淡々と生き続けているのに、どうして人間だけが、地球を壊すほどの悪さをしてしまうのでしょうか。
梨木さんのように、自然と語り合う時間が、すべての人にとって必要なのだと思います。そして、人間だけがわがまま放題に生きる時代はもう終わりにしなければならないと知るべきなのだと思うのです。
3108冊目(今年82冊目)
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