『木暮荘物語』 三浦しをん 24-95
小田急線の世田谷代田から徒歩5分で日当たり良好だけど、強い台風が来たら飛ばされそうな古いアパート、木暮荘にはお金のない若者が数人住んでいまいた。壁が薄いから、隣で何をしているのか全部聞こえてくるし、シャワーやトイレの水音はアパート中に響き渡るし、でも、そんなことは気にしない人だけが住み続けているようです。
大家さんの木暮さんは、元々は少し離れたところにある自宅に住んでいたんですけど、娘夫婦が同居することになって手狭になり、木暮さんはこのアパートの空室に引越してきました。そして、生活音の凄さに驚き、自分の親友の死にも直面し、わが身のことを考えるようになったんです。そして、何か思い残すことを残して死んでたまるかと思い、悩みぬいて電話してみたのが「デリヘル」だったんです。
部屋にやって来たデリヘルのお姉さんが説明していた「高齢者専門デリヘル」では、「おしゃべりコース」が基本で、別料金でコース変更可能なんですって。世の中はそんなことになっていたのかと驚く木暮さんです。
登場人物はみんな、それぞれに変な人ですけどね。でも、こういう人ってどこにでもいるんですよ。本当は寂しいのにそれを打ち明けられる相手がいなくてモンモンとしてるから、何かのきっかけで爆発しちゃう。だから、壁が薄くてプライバシーが筒抜けになってしまうこのアパートで、隣人から「どうしたんだよ」って言われるのが、実はありがたいのよね。
巻末の「入居者募集中!」の間取り図と「木暮荘に寄せられた声」がとってもいいですねぇ。今時の人は新築マンションにしか興味がないみたいだけど、一度こういう生活をしてみるのも大事な人生経験かもよ~って思います。
3121冊目(今年95冊目)
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