『三淵嘉子と家庭裁判所』 清永聡 24-103
2024年4月からのNHKの朝ドラ「虎に翼」の主人公となった三淵嘉子さんのことが知りたくて、この本を読んでみました。
戦前の女性は参政権もなく、大きくなったら嫁に行って子供を産み、家を守るというだけの存在で、女性が職業に就いたら嫁の貰い手がなくなると言われる時代でした。そんな中、昭和15年に日本初の女性弁護士が3名生まれました。その中の1人が三淵嘉子さんです。
裁判所という「男社会の現場」に入ってからは、女性に対する「いたわり」という名の特別扱いが、女性を縛りつけていると気づいたのである。男性からすればそれは善意なのかもしれない。だが嘉子はそれが差別の根源だと考えていた。さらに彼女のいら立ちは、その「特別扱い」を受け入れる女性にも向いていた。
「ファーストオブエブリシング」という言葉がある。そのとおり、何をやっても「女性初」という称号が嘉子の生涯にはついて回った。後ろには数多くの後輩が連なり、自分の歩美を見られている。彼女は背後の視線を感じざるを得なかったのだろう。
嘉子さんへ家庭裁判所の話が最初に来た時に、「家庭裁判所=女性」というパターンを作られてしまってはマズイと考えられたというのは、実に賢明だったと思います。女性専用のポストというのを作って、それで良しとされてしまっては、自分の後に続く人たちのためにならないと考えたのです。
現在の「こども家庭庁」の長官を見ても明らかなように、能力があるかないかではなく女性だからというだけで、人事を決められては困るのです。
男女格差を測るジェンダーギャップ指数で、2023年の日本の総合スコアは146か国中125位。先進国の中では最低レベルの水準です。
男尊女卑という思想は、日本には今でも根強く残っています。「女にはこんな職業は無理だ」とか「生理や出産で勝手に休みを取られては、周りが迷惑する」「女の上司の下で働くなんて嫌だ」などなど、世間では大っぴらには言えませんが、そう考えている人は大勢います。それに、長い間培われてきた「女は男に従うもの」とか「理系や建築業の仕事は男性のもの」といった考え方に縛られてしまって、自由に進路を決められない女性も大勢います。
嘉子さんのように、結婚して子供を産んでも、夫を亡くしても、再婚しても、立派に働くことができる人がいるのです。彼女のように、すべての人が自分の能力をきちんと発揮できる社会に、日本はなっていけるのでしょうか?
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