『なぜ、「回想療法」が認知症に効くのか』 小山敬子 24-124
高齢になれば、さらに認知力が低下し、新しい情報に対する興味が減ってきます。そうすると、「わからない」ので、ますます興味を失い、さらに「わからなく」なって来るのです。そんな「わからない」場所は居心地が悪く、「自分の居場所」ではありません。つまり、高齢者にとって「今」は居心地が悪い場所であることが多いのです。
それに比べて、昔話はどうでしょう。「ここは自分の居場所」そう思えるのではないでしょうか。そうすれば、がぜん元気が出てきます。
さらに、昔を思い出すことで、人は自分のアイデンティティが継続していることを感覚的に理解できます。「自分がずっと存在していた」ことを思い出すことで、自分の居場所を再確認すれば人は安心することができるのです。安心は人間の根源的生存欲求ですから、ここを確かにするのは大切なことなのです。P97
お年寄りと話をしていると「昔の同じ話ばかりする」と若い人は思いがちです。でも、その人が何故その話をするのか?を考えないことがほとんどではないでしょうか。
子どもの頃に近所の子と遊んだ話とか、新婚当時、おかずの味付けで配偶者と好みが合わなかったとか。
その話に登場する本人は、たとえ悩んでいたりしていたとしても、若くて、元気で、明日に希望を持っていたんじゃないかな。最近の自分はこれといった話題もないけれど、昔のことならいくらでも話せるってことなんじゃないかしら。
わたしの母も認知症になってから、昔の話ばかりしていました。女学校の先生がしてくれた話のこととか、父親(わたしの祖父)が馬の世話が上手かったこととか、何度も何度も話していました。だいたいが楽しい思い出だから、気楽に聞くことができました。
自分自身のことを考えても、子どもの頃からの友だちと話をするときに、最近の話はボヤキが多いけど、昔の話は笑えることばかりだから、そう言う話をしたがるのは、何だかわかる気がします。
この本の中で、昔のことを話してもらうきっかけとして、言葉だけでなく、モノや臭いも大事だというところに、ハッとしました。樟脳の臭い、こたつがある畳の部屋、若いころに歌っていた歌。そういうものが思い出を蘇らせてくれるんです。そして、それについて話したいと思い、歌いたいと思う、そして楽しい気持ちになる。笑顔が生まれる。それこそが回想療法なのです。
高齢者が増える社会で、介護というのは大事な問題です。たとえ身体の機能は落ちて行っても、楽しい気持ちを保てるようにすることで、介護する方もされる方も「つらくない介護」ができるんじゃないかしら。
「夜明けの図書館 5」で知った「回想法」を、ひとりでも多くの人に知って欲しいなと思います。
3150冊目(今年124冊目)
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