『まめで四角でやわらかで 上』 ウルバノヴィチ香苗 24-111
飛脚、夕立、ところてん、お月見、朝餉、火消し、煤払い、年始め、雪見酒、梅見、潮干狩り、畑仕事、梅仕事、曝書、お弁当、どれもこれも江戸の暮らしのひとこまを、見事に切り取っています。
夕立で濡れるのは構わないけど雷は怖いよとか、お月見は「十五夜の月を見たら、十三夜の月も見ないと縁起がよくない」とか、十五夜にはお芋を食べるとか、普段の生活の中のこういうことを描くって、とてもいいな。
梅の土用干しと同じように、書物の土用干しをするのは知っていましたが、それを「曝書(ばくしょ)」と呼ぶのは初めて知りました。この本で主に描かれているのは町民の暮らしですけど、禄が少ない武士が庭で野菜を作っていたリ、副業として書物の引き写しをしていたりというのも、当時の風俗を知るうえで大事ですね。
江戸時代には海に面していた洲崎で潮干狩りのシーンもいいなぁ。深川に住んでいる人だったら、歩いて潮干狩りに行けたのね。ここで採ったあさりで深川飯、おいしかったろうなぁ。
お豆腐も、油も、魚も、野菜も、たいていのものは担いで売り歩く「棒手ふり」で売りに来てくれるから、わざわざ遠くまで買い物に行かなくていいし。季節ごとに売り物も変わっていくし、今よりも買い物は便利だったんじゃないかしら。
ご飯を炊くのは朝一回だけで、後は冷や飯かお茶漬けで食べるというのも、なかなかエコよね。おかずが足りなかったら、きんぴらや煮豆を買ってくればいいし、冷蔵庫がなくたって、安心してご飯が食べられるシステムがちゃんとできていたのね。江戸時代の食のことがとてもよくわかりました。
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