『トペトロとの50年』 水木しげる 24-144
ラバウル近くのナマレというところに、戦争には役立たない、手足のない兵隊などが集められ、畑仕事をさせられた。
~中略~
私は現地人に気に入られたのだ。私もまた、奇怪な現地人を珍しく思い、面白がった。そこにトペトロ少年がいたのだ。
後年、妖怪を描くことになったが、すべて彼らの愛嬌ある雰囲気がかたちになったものかもしれない。P20
戦後30年、ラバウルを訪れた水木先生は、幸運にもトペトロと再会したのです。それ以降、忙しい仕事の合間に何度もラバウルを訪れたのですが、そのたびにトペトロさんとその家族は歓待してくれたのです。
表紙の絵は、トライ族のドクドクという踊りのときの扮装で、神様を表しているらしいのです。あれが欲しいという水木先生の無理なおねだりにも、小さなドクドクを作ってくれたトペトロさん。ホントにホントに親切な人でした。
最初に出会ってから50年、トペトロが亡くなったのだけど、家族は貧乏でお葬式をあげられないのを見た水木先生は、代わりに喪主となってお葬式をしました。こんなことじゃ恩は返しきれていないと思いつつも、最後に役に立てて良かったと思うのでした。
それにしても水木先生は、不思議な方です。ラバウルで死ぬかもしれない体験をしたのに、ラバウルが大好きなのです。文明に毒されてしまった日本にはない何かを感じていたのかもしれません。
トペトロさんが亡くなった翌年に、ラバウルの火山が爆発して、トライ族の集落はすべて灰となってしまいました。
そんなこともあって、水木さんとトペトロさんの交流を記録に残そうということでこの本を作られたようです。人との出会いとは不思議なものですね。
3170冊目(今年144冊目)
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