『春のとなり』 高瀬乃一 24-127
奈緒は義父の文二郎と、信州から江戸の深川へやってきました。2人で薬屋をひらいています。医師である文二郎は目が不自由ですが、問診と触診で患者の具合を見事に知ることができます。奈緒は文二郎の目となって仕事を助けています。
文二郎が腕がいいだけでなく、情け深いことを知っている近所の貧しい人たちは、病気や怪我の人を連れて駈け込んできます。お代は払えないけど、その代わりにと野菜を持ってきたり、お使いを頼まれたりしてくれます。奈緒はこの調子じゃ薬を仕入れるお金にも不自由してしまうと訴えますが、文二郎は笑っているだけなのです。
深川芸者から惚れ薬を作って欲しいと言われて、どうしようと悩んだり、隣の娘が悪い男と付き合っているようだと心配したり、貧しいながらもご近所さんのおかげで、まぁまぁ楽しい日常を過ごす2人です。
周りの人たちからは親切な薬屋だと思われている2人ですけど、江戸に出てきた本当の理由は奈緒の夫の仇討ちです。その真相が明らかになるにつれ、文二郎も誰かから狙われていることもわかってきました。
この物語には、本草学者としての平賀源内さんが登場して、思わぬ活躍をしてくれます。彼は自身のことを「自分は器用すぎるのが欠点だ」と言っているのが面白いです。何か凄いことを見つけ出すのは不器用な人だと断言するあたり、やっぱい源内さんは面白い人です。
戦がなくなってから、武士は弱体化していき、銭勘定が得意な商人が肥え、現実的には力関係が逆転している両者の関係が文二郎と奈緒の運命を変えてしまったけれど、深川での生活は、この2人にとって新しい発見に満ちていたのだなという所に、救いを見出したような気がしました。
#春のとなり #NetGalleyJP
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