『歌謡曲が聴こえる』 片岡義男 24-136
わたしにとっての片岡義男さんのイメージは「ロンサム・カウボーイ」のあの声であり、どこかエキゾチックな雰囲気を感じていました。ですから、彼がジャズを語るなら何の不思議もないのだけど、この本を読んで、こんなにも歌謡曲を愛しているのかと驚いたのです。
昭和の時代、歌謡曲は至るところで流れていました。商店街でも、喫茶店でも音楽と言えば歌謡曲。のど自慢番組もたくさんあったし、飲み屋街で流しのお兄さんを呼び止めて歌うのも歌謡曲。子どもたちも、それを自然に聞いていたから、流行歌をよく歌っていました。
小学生の頃「骨まで愛して」という歌が流行っていて、「こんな歌を小学生が歌っていて大丈夫なのかしら」と、担任の先生に相談しているお母さんがいました。その時の答えが「意味なんかわからずに歌ってるんだから、大丈夫」って、おおらかな時代でした。
1969年に「黒ネコのタンゴ」が大ヒットしたけれど、片岡さんにはこの曲の思い出がないという文章を読んで、「わたしには思い出がある!」と思ったのです。小学校の音楽の先生がこの曲を気に入って、給食の時間にこの曲をかけたのです。生徒たちには大好評でしたけど、「あの後、校長先生に怒られたのよ」って、次の日の音楽の授業中に先生は笑いながら話してくれました。
1954年に銀座で買った電気ギターを生涯弾き続けた田端義男(バタヤン)、フランク永井、マヒナ・スターズとか、当時の思い出がよみがえってきます。
この本を読んでいて一番ビックリしたのは、片岡さんが広瀬正さんからサックスを習っていたということです。それは「広瀬正とスカイトーンズ」というジャズバンドを組んでいてサックス奏者だったころのことでした。バンド解散後小説家となり、「鏡の国のアリス」の主人公はサックス奏者でしたね。
当時、真剣に聞いた覚えはないけれど、歌謡曲って覚えやすかったんですね。今でも歌える歌がたくさんあります。そんな歌謡曲のことを思い出させてくれた片岡さんに感謝!
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