『死んだ山田と教室』 金子玲介 24-141
2年E組の人気者だった山田は、夏休み中の8月29日に交通事故で死んでしまったのです。2学期になって、彼のいない教室は静まり返っていて、担任の先生は心配し、自分の授業時間を急遽ホームルームに変更したのです。
担任が「山田が死んでしまった事実はどうにもできないのだから、みんな元気を出していこうという」という話をしていたら、スピーカーから「お通夜じゃないんだからさ」という山田の声が聞こえてきたのです。
死んだはずの山田が、教室のスピーカーから話しかけてきたということに、最初はビックリしていたけれど、山田の楽しい話をまた聞けるということに、喜びを隠しきれないクラスメートたち。
山田がどうして声だけの存在になってしまったのか?本人だってわからないまま日々は過ぎていきます。クラスメートたちは2年が終了することには山田はいなくなってしまうんだろうなぁと思っていたのですが、3年に進級しても、山田はまだ2年E組のスピーカーから消えなかったのです。
死んで肉体はもう存在しないのに、意識だけが残るという中途半端な状態は、山田自身どうすることもできません。クラスメートが教室にいる間は良かったけれど、知らない子たちが教室を使うようになり、話し相手がいない寂しさは、つらいなぁ。
最期に明かされた山田が死んだときのこと、それは意外な話でした。みんなか信じていた「明るい山田」じゃない方の山田がいたんですね。でも、それがわかってよかった。それを気づかせてくれた友達がいてよかった。
山田は2年E組という場所に生かされていたんだね、きっと。
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