『アフリカで、バッグの会社はじめました』 江口絵理 24-164
アフリカで、バッグの会社はじめました
寄り道多め、 仲本千津の進んできた道
江口絵理(えぐち えり)
さ・え・ら書房
NetGallyJP
第70回(2024年)青少年読書感想文全国コンクール
課題図書 中学校の部
仲本千津さんがアフリカンプリントのバッグをウガンダで作り、日本で販売しているということをニュース番組で見たことがあったのですが、どうしてこういう事業を始めたのか知りたくて、この本を読んでみました。
千津さんは、子どもの頃から「人の命を救う仕事をしたい」と思い、小さい頃は「国境なき医師団」に入るために、医者になりたいと考えていました。でも理数系が不得意だったので国連職員になることを目指すことにしましたが、それも上手く行かなくて、最終的には銀行員として就職したのです。でも、それじゃ自分の夢は叶えられないと気がついてしまったのです。
そんな千津さんが発見したのはウガンダで貧困に苦しむシングルマザーたち。ウガンダでは結婚という形式が重要視されておらず、子どもを生んだ女性を捨てて他の女性に走る男性が多いというのが、その最大の理由です。援助という形でお金を彼女たちに与えることは簡単です。でも、それでは本質的なところはちっとも変りません。自分でお金を稼ぐというシステムを作らなかったら、今目の前にいる彼女たちのような人たちが永遠に増えてしまうだけだということに気がついたんです。
アフリカンプリントのバッグを彼女たちに作ってもらい、日本で売るという仕事を考え出した千津さん。これは間違いなく「人の命を救う仕事」です。いろんなことが初めてのことばかりでしたけど、彼女はこの仕事が自分の天職だと信じ、いろいろな人を巻き込みながら、この事業を推し進めてきました。
千津さんのやり方の中で特に大事だなと思ったのは、製品の品質が悪くても「可哀想だから買ってあげてください」というやり方をしてはいけないと考えたことです。デザインがステキで、縫製もしっかりしているから、高くても買ってもらえる製品を作ることをモットーにしているのです。
そうすることによって、ファンも増えるし、ウガンダの女性たちの所得も増えるし、という良い循環を作ったこと、それこそが「人の命を救う仕事」を継続するために必要なことです。
何かをしようとした時に、それが上手く行かないことがあって、そのまま頑張るのか、違う道を探すのか、それは本人の自由であるはずです。これまでの日本では「継続」こそが大事と考える人が多くて、そうでない人を非難するようなこともよくあります。でも、千津さんのように紆余曲折があっても、自分がやりたいことの元となるところがしっかりと守られていれば、それでいいはずです。
色々やってみたからこそ、色々なことが分かった、という千津さんの生き方は実に見事だと思います。
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