『編み物ざむらい』 横山起也 24-175
そもそも、この国にメリヤスが入ってきたおは安土桃山、織田信長や豊臣秀吉の時代から江戸初期ににかけてだそうだ。
金平糖や軽衫袴(かるさんばかま)と同じく、葡萄牙や西班牙などの南蛮から来た宣教師たちがもたらしたのだという。
この本を読むまでは、武士と編み物というのが結びつかなかったのですが、意外と歴史は古くて、武士の副業として編み物が作られていたとは、初めて知りました。手袋、足袋、袋物など、メリヤス編で作られたものがかなりあったのですね。そういえば、昔はメリヤスのことを「莫大小」って書いてましたね。
主人公の感九郎さんは、父から勘当されて家を追い出されてしまいました。行く当てもなく大川のほとりで編み物をしていたら、寿之丞(ジュノ)という不思議な男に出会い、彼の仕事を手伝うことになります。
感九郎さんはとっても真面目な人で、正しいことと悪いことをハッキリさせないと気が済まない、いわば融通の利かない人だったのです。でも、ジュノさんたちのおかげで、世の中にはいろんなことがあるということが、少しずつわかっていくのです。
編み物や組み紐のような手作業が大好きで、一心に手を動かしているうちに雑念が消えていくので、心がおだやかになると感じる感九郎さん。編み物をしているうちに、一種のトランス状態になるという感じ、ちょっと分かる気がします。わたしも、久し振りに編み物を始めようかなぁ。
彼はずっと劣等感だらけの人生を歩んできたのだけれど、家を出て、様々な体験をするうちに、自分にもできることがあるとわかっただけでなく、とんでもない才能を持っていたことにも気づいてしまったのです。それが、自分を見つめ直すということにつながったのかもしれません。
編み物が武家の生活と密接な関係にあったという話が興味深くて、こういう話を書いた人はどんな人かと思ったら、著者の横山さんは編み物作家なのですね。編み物に関する著作もあるので、そちらも読んでみたくなりました。
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