『赤と青とエスキース』 青山美智子 24-163
エスキース(esquisse)とはフランス語でスケッチという意味です。売れない画家だったジャックは、この絵を最初はスケッチのつもりで描いたいたのだけれど、モデルからほとばしる何とも言えない雰囲気を感じ、そこから新しい自分を発見し、素晴らしい作品を作り上げたところから、この物語が始まります。
一章 金魚とカワセミ
メルボルンに留学中のレイは、恋人のブーの紹介で、ジャック・ジョンソンという画家のモデルをすることに。
二章 東京タワーとアーツ・センター
額の職人をしている空知は、「エスキース」という絵を見て、この絵の額を作ってみたいと思ったのです。
三章 トマトジュースとバタフライピー
漫画家タカシマは、かつてアシスタントだった砂川の作品「ブラック・マンホール」が「ウルトラ・マンガ大賞」を受賞したのをきっかけに対談を頼まれ、とある喫茶店で取材を受けました。彼らが坐った席の横にあったのは、あの「エスキース」という絵でした。
四章 赤鬼と青鬼
51歳になった茜は、パニック障害を発症してしまい、仕事をしばらく休まざるを得なくなってしまいました。
エピローグ
赤と青の絵具で絵を描いた人。その絵に惚れ込み額縁を作る人。その絵を飾る喫茶店で取材を受ける漫画家。パニック障害に翻弄される女性。それぞれの物語がエピローグで一つにまとまるところが、実に見事でした。
人生には思いもかけない出会いがあり、別れがあり、再会があるのだと、しみじみと感じました。それにしても、ブーという変わったニックネームの秘密が、この物語のキーだったとは驚きです。
赤と青とエスキース、この3つのピースが作り出した物語、「エスキース」という絵がどんな絵なのかとても気になります。
第三章で登場する「ブラック・マンホール」が実際にコミック化されるようなのですが、これも楽しみです。
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3189冊目(今年163冊目)
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