『愛についてのデッサン』 野呂邦暢 24-177
父親が営んでいた古書店を引き継いだ佐古啓介さん。個人宅へ古書を引き取りに行ったり、店番をしたり、依頼主にとって思い入れのある本を探して欲しいという話を受けたり。古書店の仕事は単純なようでいて、意外と煩雑なのです。啓介さんは、本だけでなく、人を探して欲しいと頼まれることもあります。
普段は自分の店にいて、仕入れに行くくらいしか外に出ることがないからでしょうか、何かを頼まれて旅に出るのがとても嬉しそうに感じます。移動中も本を読み、旅先でも時間があれば必ず古書店を訪れてしまうのは、やっぱり古書が好きだからなのでしょうね。
そして、最終話では、父親が長崎出身なのに、東京へ出て来てから一度も帰らずに亡くなってしまったのは何故なのかを探る旅もしています。ずっと一緒に暮らしていたのに、考えたこともなかった父親のこと。それを探すうちに、自分がいかに父親のことを知らなかったのかがわかってくるあたり、わたしもそうだなって思ってしまいました。
男と女の考え方の違いを妹から突っ込まれる啓介さん。思い込みが強いところもあるけれど、一生懸命に考える人であるところがいいですね。このまま、ずっと古書店を続けていくのかな。
日月さんからご紹介いただいたこの本、最初に出版されたのが1979年ということですから、45年も前のこと。東京から長崎まで新幹線で行くという部分に、懐かしさを感じました。わたしも35年ほど前に同じように旅したことがあるのです。
長崎の市電に乗り、グラバー邸と浦上天主堂へ行ったことくらいしか覚えていませんが。長崎の町が異国の地のように思えたことを思い出しました。
3203冊目(今年177冊目)
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