『算法少女』 遠藤寛子 24-162
この物語の主人公「あき」は、父親の桃三から算法の手ほどきを受け、算法が大好きになりました。彼女の噂を聞きつけて、久留米藩主・有馬侯が、あきを姫君の算法指南役にしようとしたところ、それを快く思わない勢力からの横槍が入るのです。
大人たちは大騒ぎしていますけど、あきにとってはそんなことどっちでもいい話で、彼女の関心事は、寺子屋にも通えない子どもたちに算法を学んでほしいということなのです。奉公に出るにしても、大工などの職人として働くにしても、九九などの基本的なことは覚えておいた方が、何かと役に立つのですから。
江戸時代の算法には、すでに円周率の考え方があったして、かなり進んだものであったことに驚きます。と同時に、算法も流派による権力争いがあったというのは、なんだか悲しい気がします。真理を追究するための学問なのだから、切磋琢磨していけばいいだけなのに。
子どもたちに算法を教えることを、自分の使命と考えたあき。彼女のような人こそが世の中にとって本当に必要な人なのだと思うのです。
「算法少女」という江戸時代に書かれた本からインスパイアされ、作者の遠藤さんは更に想像力を膨らませてこの作品を書いたのだそうです。最初に岩崎書店から出版されたのが1973年。出版後10年ほどして増刷されなくなってしまいました。しかしこの本の熱心なファンが、復刊ドットコムなどで応援してくださり、2006年にちくま文芸文庫で復刊された。という「文庫版あとがき」を読んで、こんなにも本を愛し、応援してくれる人がいる素晴らしい本なのだということを知りました。
この本が、これからもずっと読み継がれていくといいなぁと思います。
3188冊目(今年162冊目)
« 『生命活動として極めて正常』 八潮久道 24-161 | トップページ | 『赤と青とエスキース』 青山美智子 24-163 »
「日本の作家 あ行」カテゴリの記事
- 『ペコロスの母に会いに行く』 岡野雄一 26-254-4013 (2026.09.09)
「日本 児童書」カテゴリの記事
- 『八田與一 東洋一のダムを作った日本人』 許光輝、みやぞえ郁雄、平良隆久 26-253-4012(2026.09.08)
- 『団地のさんにん』 藤野千夜、北澤平祐 26-247-4006(2026.09.02)
- 『エルトゥールル号の遭難』 寮美千子 26-227-3986(2026.08.14)
- 『兎の眼』 灰谷健次郎、長新太 26-246-4005(2026.09.01)
「江戸時代」カテゴリの記事
- 『うらぎり長屋』 高瀬乃一 25-347-3743(2025.12.15)
- 『蔦屋重三郎とその時代。』 ペン編集部 編25-195-3591(2025.07.17)
- 『八犬伝 下』 山田風太郎 25-90-3486(2025.04.03)
- 『八犬伝 上』 山田風太郎 25-83-3479(2025.03.27)
- 『蔦重の教え』 車浮代 25-74-3470(2025.03.19)
« 『生命活動として極めて正常』 八潮久道 24-161 | トップページ | 『赤と青とエスキース』 青山美智子 24-163 »




コメント