『きりこについて』 西可奈子 24-204
きりこは、ぶすである。
この始まり方はショッキングだ!
美男美女の両親に育てられたきりこは、「可愛い可愛い」と育てられてきたから、自分がぶすであることに気づかずにいた。それどころかクラスのボスとして君臨していた。
きりこが小学校の体育館裏で拾ってきた黒猫「ラムセス二世」は人間の言葉がわかる。そして、きりこにいろんなことを教えてくれる。
年頃になってきて、きりこが「自分はぶすなんだ」と自覚して引きこもってしまった時にも、ラムセス二世はいつも一緒にいてくれた。
自分より頭が良かったり、背が高かったりする女を嫌がる男とか、夫に愛されていないコンプレックスから宗教に走った奥さんとか、レイプされたって助けを求めても「そんな派手な格好をしてたから」って言う相談員とか、世の中にはしょうもない人がたくさんいるんだ。
それに比べたら猫の世界はよっぽどちゃんとしているって、きりこはラムセス二世に教われてよかった。「ぶす」という呪縛は人間だからこそ持ってしまうつまらない考えだって気づけたんだもの。
こどものころの頭の中は酔っているのと変わらないという著者の指摘はすごいなぁ。酔っ払いなら、酔いが醒めればバカなことをやっちゃったなぁと気がつくことも、こどもは酔ってないのだから気がつきようがない。だからバカなことをし続ける。
大人になるにつれて、そんな酔いが醒めて「あれって何だったんだろう?」と思うのはそういうことだったのか!
でも、そんなことに気づけずに、大人になってもずっと何かを信じ込んでしまっている人だっている。それは酔いが醒めていないってことだから、依存症状態ってことなんだろうか?なんてことまで考えてしまった。この本、実に哲学的なのだ!
3230冊目(今年204冊目)
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