『中流危機』 NHKスペシャル取材班 24-208-3234
「一億総中流」と言われ、人々もそう信じていた昭和という時代がありました。その次の平成という時代が「失われた30年」になるなんて、だれが想像していたでしょう。2022年の調査で、自分は中流より下と感じている人が56%、つまり日本国民の半数以上が自分は貧しいと感じているのです。
中流の定義として「正社員・持ち家・自家用車」が挙げられていましたが、いまやこの3つのどれも持っていない人が圧倒的に増えています。
景気が良かったころは、住宅ローンで家を買うのが普通でした。でも、景気が悪くなって気がついたのは、当時は給与の中で残業代が占める割合が高かったということです。コロナ以降、残業なしがあたりまえになり、その収入では住宅ローンは組めません。教育ローンですら、親と子の2代でという契約でないと成立しないのです。
学校を卒業したらみんな就職できた時代、雇用形態はみな正社員でした。でも今は非正規労働者が想像以上に増えています。
「派遣労働」が生まれた1986年の段階では、派遣とは専門職のみで高賃金の働き方でした。その後、派遣法が変わり、専門職でなくても派遣労働が許されるようになりました。それが非正規労働者が増えた原因です。
それによって労働者は「経費」扱いになっていきます。「コストカットしたければ、派遣切りすればいい」という世の中になってしまったのです。
非正規、持ち家なし、車どころか運転免許証すらなし、という若者が増え、いまやその人たちは中高年になっています。
この本の前半では、こんな絶望的な日本が語られています。
後半では「リスキリング」、つまり今の時代に適応した技術を身につけることを推奨しているのですが、どうも絵に描いた餅という感じがします。
ITとかDXとか、キラキラした仕事にリスキリングできたらって、それはただの夢でしょ!非正規のまま中高年になってしまった人たちは、どこでそういう勉強をすればいいのですか?とにかく働いてお金を稼がなくては生きていけないという状況の人にとって、リスキリングなんて余裕はないでしょう。
ハローワークで職業訓練の案内をしてはいますが、希望した全員が受講できるわけではありません。そもそもそういう制度があることすら知らない人がほとんどだし。
せめて「同一労働同一賃金」だけでも実現されればいいのですけど、それすらやらない、できない、今の日本。いったい、どこまで落ちていくのでしょうか?
3234冊目(今年208冊目)
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