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『永遠についての証明』 岩井圭也 24-202

Eiennituie

永遠についての証明

岩井圭也(いわい けいや)

角川文庫

カドイカさんとひらけば夏休みフェア2024

天才的な数学の才能を持っている三ツ矢瞭司。特別推薦によって協和大学の数学科に入学し、類まれな才能は周囲を驚かせていった。そんな彼は、同期で特別推薦生でもある熊沢勇一と斎藤佐那を惹きつけ、3人は共同で数学にひたすら挑む日々を過ごす。だが、瞭司の抜きんでた才能はやがて、周囲の人間関係を歪ませていき、徐々に彼は深い闇にのまれていく。(書籍紹介 より)

 瞭司には秀でた数学の才能がありました。熊沢や佐那にも数学の才能はあったけれど、瞭司は特別だということはすぐに分かりました。でも、秀でている度合いが普通ではなかったのです。彼が語る数学の話を理解できるのは数学科の先生と友人だけ。だから、この環境を必死に守ろうとしてしまったのです。

 仲の良かった友達や先生が大学を去って行ったあと、瞭司は語り合う相手をなくし、孤独になり、そして。

 瞭司の死後、彼が遺した研究ノートを手にした熊沢は、その内容を理解しようとするのですが、難しすぎるのです。でも、彼を孤独な死に追い込んでしまった責任を感じている熊沢は必死にこのノートと向き合っていくことにしたのです。

 

 カテゴリーは全く違うけれど、天才としか思えない人に出会ったことがあります。その人が生み出すものは実に素晴らしい。でも、つきあっていくには難しいものを持っていました。

 天才は、凡人とは全く違う景色を見ているらしいのです。わたしには正面からしか見えない景色を、あの人は俯瞰で見ているようなのです。わたしには聞こえないのに、あの人には聞こえているようなのです。だから、それを説明しようとしても理解されない。それが天才の悲劇なのかもしれません。

 瞭司のそばに、彼を理解してくれる人がひとりでもいたら、あれほどの破滅は起きなかったのかもしれません。でも、そばにいた人がどれだけ耐えられるかという問題が発生していたかもしれません。

 寂しい最期だった思う人が多いだろうれど、数学とともに生きて行けた瞭司は幸せだったのだろう。わたしは、そう思いたいのです。

3228冊目(今年202冊目)

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