『「不適切」ってなんだっけ』 高橋源一郎 24-199
わたしが小さい頃、新作映画を観るとき、情報はほとんどなかった。映画館で上映される予告編が唯一で、それさえないこともあった。もしかしたら、大人たちには、情報を得る手段があったかもしれない。けれども、子どものわたしたちは、いつも映画館に出かけて「初めて」それを見るしかなかった。だからこそ、それは本当に心を揺るがす「経験」になったのだ。
「君たちはどう生きるか」(2023年7月14日)は、公開前に一切の情報を出さないことで話題になりました。最近の映画は、予告編や映画紹介情報を眺めているだけで、ストーリーが全部わかっちゃうんじゃないかと思えるようなものが多い中で、このようなスタンスはとても新鮮でした。みんなが期待している宮崎駿作品だからこそできたのかもしれませんけど、配給会社の売らんかな精神が見えない感じで清々しい感じがしたのは確かです。
映画でも、お芝居でも、小説でも、どんなものが出てくるかわからないから楽しいという感覚を、わたしたちは忘れてしまっていたのかもしれません。
昔、淀川長治さんが映画について語るラジオ番組があって、映像はないのに淀川さんの話だけでイメージが膨らんで映画を見に行ったこともありました。レコードをジャケ買いするということもありました。そういう想像力っていうのもとても大事だと思います。
いずれにせよ、現代に生きるわたしたちの想像力や感性は、かなり弱ってしまっているんじゃないかなぁ?と思うのです。
この本の中で、わたしが普段気づかずにいた本をたくさん見つけました。なんだかわからないけど面白そう!という感覚を信じてみようと思います。
そして、高橋さんも書いているように、ストーンズのアルバム「ハックニ―・ダイアモンズ」は素晴らしい!
・「さかなクンの一魚一会 まいにち夢中な人生」 さかなクン
・「マダムたちのルームシェア」 seko koseko
・「女と刀」 中村きい子
・「問題の女 本荘幽蘭伝」 平山亜沙佐子
・「精神病院を捨てたイタリア 捨てない日本」 大熊一夫
3225冊目(今年199冊目)
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