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『ウラジオストクから来た女』 高城高 24-236-3262

Urajiosutok

ウラジオストクから来た女

高城高(こうじょう こう)

東京創元社

 明治24年、寒さが迫りつつある10月の函館。函館水上警察署の五條文也警部は、人々の注目を集める見慣れぬ毛皮のコート姿の女に目を奪われた。

 彼女はロシアの富豪の養女で、金のかかった服装で、コートはセイブル(黒貂)で、宝石並みの高価なものだというのです。これ以外にもラッコの毛皮とか、アザラシの毛皮とかも話に登場します。当時防寒具として毛皮は重要で、密漁なども横行していたという話も出てきます。

 函館港は本州からやって来る船が多数あり、函館水上警察は、怪しい動きがないか、船の積み荷はどんなものなのかなど、かなりの仕事量があったようです。そして、港があれば、繁華街があり、遊郭があり、博徒がいるわけですから、こちらの仕事も忙しいのです。

 

 北海道はロシアの目と鼻の先に位置していますから、ロシアの船も多数やって来るし、他の国の船もやってきます。当時函館にイギリスの領事館が開設され、ドイツやアメリカなどの人たちの事務手続きは代行していたけれど、ロシアは仲が悪かったのでそのような仕事はしなかったという話は初めて知りました。

 そういう地域性があるので、函館水上警察署の人たちは外国語に長けた人が多かったというのには、なるほどと思いました。

 それにしても、この時代のことって知らないことだらけです。ロシアのニコライ2世は、皇太子時代(当時22歳)に日本を訪れて、政府が用意した警護者に斬りつけられた(大津事件)には驚きました。当時日露関係は良好だったので大問題にならなかったというのにもビックリ!

 事件の検死を担当した医師の知識の豊かさにも驚いたし、病院での治療技術が高いとビックリしていたというイザベラ・バード(日本奥地紀行)の話が出てきたのには、ちょっとニヤリとしたり。

 わたしにとっては、ストーリーよりも当時の風俗や事件に関する記述の方が面白かったなという感じです。

 

この4篇が収められています。

・ウラジオストクから来た女
 函館から見ると、東京よりウラジオストクの方がはるかに近いということを、実感する物語でした。

・聖アンドレイ十字 招かれざる旗

Rosiakaigun

 2作目のタイトルになっている「聖アンデレ十字」というのが気になって調べてみました。
 これは二本の直線が斜めに交差したX十字型の文様であり、キリストの十二使徒のひとりでX字型の十字架で処刑されたとされる聖アンデレに由来しています。ロシア海軍軍艦旗として「正アンデレ十字」が使用されています。聖アンデレは、英語読みではセント・アンドリュースです。スコットランドではセント・アンドリューが守護聖人であり、セント・アンドリュー・クロスが国旗となっています。


・函館氷室の暗闇
 五稜郭のそばで切り出される氷は、重要な産業でした。

・冬に散る華
 利権があるところに悪者あり。

3262冊目(今年236冊目)

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