『オオルリ流星群』 伊与原新 24-241-3267
高校3年生の文化祭のとき、力を合わせて頑張った仲間がいました。卒業後、連絡を取り続けた人もいれば、それっきりになってしまった人もいました。地元に残って家業の薬屋を継いでいた久志は、音信不通だった同級生・慧子が帰ってきたらしいという連絡を受けました。
高校時代から成績優秀だった彗子は天文学者になっていました。彼女はこれまでの仕事を辞めて、手作りで天文台を建てたいというのです。彼女の計画に、同級生たちは力を貸そうと決めました。
彗子がやろうとしていることは、かなり無謀なことでした。彼女は最初ひとりでやろうとしていたのだから、それでは最初の一歩すら踏み出せなかったのかもしれません。仲間がいて、わからないなりにもがいて、人のつてを頼って、少しずつ前進できるようになりました。
でも、それどころじゃない、自分は45歳なんだ。自分の店のことをもっと考えなければいけないし、家族のこともあるし、自分はこんなことをしていていいのか?って悩む人もいる。夫の親と同居しているから、そちらとの折り合いもつけつつ手伝う人もいる。真面目に働いていたのに、会社の都合でいいように使われて、心を病んでしまった人もいる。でも、みんな仲間だからという気持が、彼らを突き動かしたのです。
高校時代の友だちと、たまに会うことがあります。いくつになっても不思議なくらいあの頃の気持ちに戻れるから、どんな話をしていても笑えるし、相談事を持ち込まれても、何でも聞いちゃうよってスタンスを取れるのも、やっぱり高校3年生を一緒に過ごした仲間だからだよねって思います。
亡くなってしまった友達の話も、今だから言えるという話も、何でも話せるのが仲間なんだよね。
流星を望遠鏡で観察するだけでなく、音でも観察ができるということを初めて知りました。それもまた、仲間を思う気持ちからだったという所に胸が熱くなりました。
3267冊目(今年241冊目)
〇伊予原新さんの作品
月まで三キロ
八月の銀の雪
宙わたる教室
オオルリ流星群
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