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『ビートルズ』 北中正和 24-224-3250

Beatles

ビートルズ

北中正和(きたなか まさかず)

新潮新書 922

 ビートルズに関する本は、それはそれはたくさんあります。そのほとんどが曲の解説やメンバーたちの生い立ちなどについて語っています。それに対して、この本の特徴は、ビートルズのバックボーンにはどんな歴史があり、どんな音楽があったのかということなのです。

17世紀から19世紀にかけてイギリスの船は、アフリカ西海岸に綿布や銃などの興業製品を売りに行き、アフリカ人を積んでカリブ海者新大陸まで運んで奴隷として売り、当初はジャマイカの砂糖やたばこ、後にはアメリカの綿花などを積んでヨーロッパに戻って来るいわゆる「三角貿易」で距離を得ました。その拠点がリヴァプールでした。

 第二次世界大戦後、リヴァプールは昔のように栄えている町ではなくなってしまいましたが、海外とのつながりが深い町だったのです。ですから外国の人も大勢やって来ていたし、外国の音楽を聴く機会もたくさんあったはずです。

 そして、忘れてはならないのがイギリスとアイルランドの関係です。イギリスはアイルランドを統治していたにも関わらず、飢饉で苦しむアイルランドを助けることはなかったのです。生きていくために母国を離れ、イギリスやアメリカに移民として渡っていった人が大勢いたのです。

 ビートルズ4人のルーツを辿っていくと、全員アイルランドの血が通っていたというのは初めて知りました。

 余談ですが、アイリッシュ・ダンスは上半身や腕は動かさず、足のみを使って踊るスタイルですが、これはイギリスがアイルランド伝統音楽の演奏を禁じていた時代に、窓から見られてもわからないように足でリズムを取って伝承していたことが発祥と言われています。

 ビートルズの音楽には、アイルランド民謡ややスコットランド民謡の影響が大きいからこそ、「My Bonny」を歌っていたのですね。

 奴隷貿易で栄えた町リヴァプールで生まれた青年たちがアメリカの黒人音楽に影響を受けてビートルズを作ったというのは、不思議な縁です。Let it be の録音に参加したビリー・プレストンは、リトル・リチャードのバンドにいたこともある人だったから、ぜひぜひという感じだったのでしょう。

 

 そして、ラテン音楽の影響という部分も面白かったです。映画 Let it be の中で、ポールが「ベサメ・ムーチョ」を歌っていたのがずっと気になっていたんです。彼らの子ども時代、ラテン音楽はとても身近なものだったのでしょうね。

 

 そして、もう一つ大事なルーツとはインド音楽です。そもそもはジョージがシタールの音に心惹かれ、ビートルズ全員でインドへ旅するほどの熱の入れようでした。今考えてみれば、ワールドミュージックの「はしり」だったのかもしれません。シタールを中心としたインド音楽のサイケデリックな部分に惹かれたのかなぁ?とにかく、今まで聞いたことがない音楽という部分に惹かれたのでしょう。

 

 ああ、ビートルズに関する話は、どれもこれも楽しい!

3250冊目(今年224冊目)

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