『非・バランス』 魚住直子 24-254-3280
主人公は中2女子。小学校の時にいじめに遭っていた。親や先生にはいじめのこととか、イヤな子のこととかは一切話していない。どうせわかってくれないから。中学校へ入るタイミングで家が引越しをしたので、過去のことを誰も知らない中学校に入れてホッとした。でも、あんな目には二度と会いたくないから、中学校では友達を作らないことにしました。
そんな彼女が、サラさんという大人の女性と出会って、初めて何にも気にせずに話ができることに驚きました。「サラさんはわたしがどんな話をしても、ちゃんと聞いてくれる。それがとても嬉しい。」
同じクラスの「みずえ」が学校の窓から飛び降りて、幸い足の骨折だけで済んだのだけど、どうして飛び降りたのかをみずえは話しません。担任に頼まれてみずえのお見舞いに行った主人公は、そこで意外な事実を知りました。
みずえは仲良し3人組でわたしをいじめようとしていたのだと思っていたのだけど、実は違っていたのです。
主人公の子も、サラさんも、みずえも、他の子も、みんな本当のことは言わない。いや、そうじゃない。本当のことは言えない。だって、誰を信じていいのかわからないから。
みずえは仲良しグループから外れるのが怖かったのかもしれない。主人公の子は誰かとつるむこと自体に嫌悪感を持っている。サラさんだって、本当の気持ちを誰にも話せないでいる。
わたし自身、高校入学の時点で「それまでの自分を捨てよう」と思ったことを覚えています。自分の過去を知っている人と付き合わなくていい環境に入れた解放感は、とても爽快でした。
心の中にある「イヤなもの」を吐き出せなくて苦しいという気持ち、それは子どもでも大人でも同じ。ひとりで悩んでいると永遠に解放されないかもしれないと思ったりする。だから死にたくなってしまうこともあるのかもしれない。
そんな時に、話を聞いてくれる誰かがいるかどうか、それが運命の分かれ道なんだろうな。
この本は児童書だけど、大人にも読んでもらいたい。心の中に何かがつっかえている人なら、きっとわかることがあると思う。そんな本です。
3280冊目(今年254冊目)
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