『函館水上警察』 高城高 24-251-3277
先日読んだ「ウラジオストクから来た女」はシリーズの2作目だということに気づき、1冊目のこの本も読んでみました。
軍艦の蒸気機関には欠かせない水と石炭の荷役が始まった。函館はその両方に恵まれていた。亀田川の水は飲用に良質で長持ちすると言われ、幕末から外国船がわざわざ寄稿して汲んでいくほどだった。
明治22年には、横浜に次いで国内2番目の近代的な上水道が開通、東浜町の岸壁には気船専用の給水所が設けられた。もちろん汽船は接岸できないので、船自体が大きな水槽みたいな水艀船(みずはしけ)が汽船との間を往復する。艀船につけたポンプに川のホースをつないで汽船に給水していた。
石炭も空知炭田の幌内炭は、発熱量が高くて灰分が少ないうえ値が安いので、汽船はできるだけ函館で捕球するよう燃料庫を調整した。
明治初頭の函館は、当時物流の主流だった蒸気船の燃料及び水の補給地として重要な場所だったことが良くわかります。函館港には日本船だけでなく外国船もやってくるので、その船が運んできた物の確認及び税の徴収をする税関の仕事も発生します。
当時は毛皮の需要がかなりあったので、ラッコ、アザラシなど、海獣の漁が盛んで、アメリカ、カナダ、ロシアなどの船が漁をしていました。高額商品であるだけに、密輸入をしようとする人も当然いるわけで、その取り締まりの仕事はとても危険なものでした。
新しい時代には新しい仕事が生まれます。それを目指して日本各地から様々な人たちが集まって来ていたのには驚いてしまいます。当時の函館は想像以上に国際都市であったのです。
4話目までは明治24年頃の函館水上警察の話ですが、5話目は明治4年、若き日の森林太郎(鴎外)の函館訪問記です。これもフィクションなのですが、そういうことがあったのかもしれないと想像が膨む楽しい物語でした。
この5話が収められています。
・密猟船アークテック号
・水兵の純情
・巴港兎会始末
・スクーネル船上の決闘
・坂の上の対話-又は「後北游日乗」補遺
3277冊目(今年251冊目)
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