『小さな出版社のつくり方』 永江朗 24-271-3297
日本の出版社と取次店の関係というのは、前時代の遺物であるような気がします。本を書店へ運んでくれたり、お金の回収も知れくれたり、売れなかった本は返品できたり、便利といえば便利だけれど、注文しても、希望した通りの冊数を送ってくれなかったり、その店で売れるはずもない本を配本してきたり、腐れ縁のような、なれあいのような、どうしてその関係を変えていけないのかがわからないと感じることが増えました。
小さな出版社が大手の取次店と契約は結べても、急におかしな条件を提示されることもあるというのです。
ある取次店の担当者が、「返品があるから保証金を出せ」と言ってきたので、「うちの返品率は10%未満で、業界平均の40%よりはるかに低いのですが」と返事をしたら、その担当者が絶句して、結局、保証金の要求を取り下げたという話など、現状を調査もせずに勝手なことを言ってきているということなのでしょうね。
誤解されることが多いが、トランスビューでも基本は返品条件つきである。月ぎめで請求書を発行する書店はいわゆるフリー入帳で、いちいち出版社の了解を取らなくても返品できる。ただし返品送料は書店が負担する。
返品自由にもかかわらず、トランスビューの返品率や驚くほど低い。業界全体の返品率が40%程度だというのに、だいたい13%ぐらいだというのだ。一般の出版社の3分の1ということになる。ただし発行点数が少ないので、年によってのばらつきが大きい。4、5%の年もあるそうだ。
なぜ返品率が低いのか。それは注文品しか出荷しないからだ。取次が勝手に書店に送り付ける「見計らい配本」がない。
取次店の都合で行われている勝手な商習慣がはびこる中で、これまでのパターンを変えようとしている取次店がが増えてきているのは、小さな出版社にとっては朗報です。
小さな出版社を作るのは、元々本の編集の仕事をしてきた人が多いけれど、雑誌の編集者だった人もいます。これまでのような出版社のありかただけでなく、作者と出版社の間を取り持つエージェントとしての機能を目指している人もいます。
定年になって始めた人もいれば、結婚したり子どもが生まれたり、親の介護が発生したりして、自由に働けることを模索して「ひとり出版社」にたどり着いた人もいます。
この考え方は出版社だけでなく、ほかの業種であっても取り入れられるんじゃないかなぁ。会社が大きくないからこそできることがあるって、素晴らしいことじゃないですか。
この本で取り上げられている小さな出版社
〇アルテスパブリッシング
〇鉄筆
〇羽鳥書店
〇悟空出版
〇ブックエンド
〇小さい書房
〇コルク
〇SPBS
〇トランスビュー
〇ころから
〇共和国
この本を出版している猿江商會も、やはり「ひとり出版社」です。出版業界が厳しいと言われる時代になってしまったけど、個性的な本を出版する人たちがこんなにも大勢いるというのは、とても心強いのです。
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