『トンネルに消えた女の怖い話』 クリス・プリーストリー 24-261-3287
トンネルに消えた女の怖い話
Tales of terror from the tunnel's mouth
クリス・プリーストリー
Chris Priestley
デイヴィッド・ロバーツ
David Roberts
三辺律子(さんべ りつこ) 訳
理論社
英国
6人掛けのコンパートメント席に、少佐、司教、農夫、白いドレスの女、そして主人公の少年の5人が乗り合わせることになりました。座れてホッとしたからかすぐに寝てしまった少年が目を覚ますと、なぜか列車はトンネルの手前で止まってしまっていました。
男たちはみな寝てしまっていて、白いドレスの女だけが起きていて、「ひまつぶしに、おはなしをしましょうか」と言うのです。
列車はなかなか動きそうになかったので、女の話を聞くことになったのですが、どの話も少年少女が登場する怖い話でした。本当は眠くなってきたのだけど、寝てはいけないという強迫観念に襲われた少年は、女の話を聞き続けます。
イギリスの身分制度がどの話にも色濃く出てきます。大工や肉屋といった、生活にとって大事な仕事をしている労働者階級に対する、上流階級の人たちの見下す態度はいやらしいし、そういう態度をされるのが当たり前と思いつつも、ああいうヤツらは嫌いだという気持ちが生まれます。結局、登場する人たちのほとんどが、意地悪な気持ちを持って生活しているのです。
親が再婚したことによって一緒に暮らすことになった継母のことをいやがる主人公の少年も、怖い話の登場人物と同じような人間なのだけど、そういうことには気づかないのです。
人間の本質というのは、そういうものかなぁ。その悪意が悪いものを呼ぶのかなぁ。特に「シスター・ヴェロニカ」は怖いなと思います。教会ではああいうことが行われるというのは、いろんな物語に出てくるけど、ああやって復讐されてしまうというのは珍しいですよね。
最後の話では、白いドレスの女は、少年のことも連れていきたかったのでしょうか、あの挿絵は怖いですね。こっちへおいでって言ってる!
3287冊目(今年261冊目)
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