『14歳の君へ』 池田晶子 24-309-3335
「個性」というのは、他人がそれを認めるもの、あれがあの人の個性だと言うものであって、自ら求めるものではないんだ。君が誰かを個性的な人だと感じる時、その人は、どことなく人と違う、独特の雰囲気を持っているね。それは、その人が、自分で自分をどうこうしようという意図を持ってないからだ。自分がもって生まれたその個性に従って、自らそうなる自分であるからだ。そういう本当に個性的な人間に、君はなりたいと思わないか。
「自分らしく」を求めることが、自分を自分らしくなくしている。この逆説について、もう一度ひとりで考えてみよう。P33
「自分探し」とか、「人生の目標」などを考えることが、今の流行なのでしょうか? いろいろと探してみたけれど見つからないのは、今時の流行に自分を無理やり当てはめようとしているからなんじゃないかなぁ?本当の自分らしさって、そういうものじゃないよね。子どもの頃に大事にしていたものとか、ご飯の時間も忘れて没頭して何かをやっていたこと。そういうことって、きっと誰にもあるはずなんだけど、それをどこへ忘れてきちゃったのかなぁ?
最後にひとつ、確認しておこう。誰が考えてもそうであることは、大勢の人がそう思っている事とは違う。大勢の人が思っていたって、間違っていることは、間違っている。大勢の人が1足す1は4だと思っていたって、それが正しいことにはならないのと同じだ。誰か偉い人が正しいと言ったから正しいと思うのも違う。本当に正しいことなら、そう考えるのがたとえ君ひとりでも、正しいことであるはずだ。P55
世の中のズルい人たちは、都合の悪いことは隠しておいて、「こっちが良いことですよ」「これが流行ってますよ」って情報操作をしてきます。だから、世の中で信じられていることのすべてが真実とは限らないってことを、いつも頭の片隅に置いておかないと、想定外のことが起きた時に何もできなくなってしまうのです。
その後も打ち続く教育環境の退廃ぶりには、目を覆うものがあります。気の毒なのは子どもたちです。せめて自ら考える力に目覚めることで、不幸な時代を生き抜く意味に気がつけばと願うものです。
受験の役には立ちませんが、人生の役には必ず立ちます。(あとがき より)
なぜ、日本の教育は「考える」ことを無視してきたのでしょうか?それは、考えない人たちの方が操作しやすいからではないかと、わたしは思います。考える習慣のない人は、その時に耳に入った大きな声に反応しやすいのです。それが正しいかどうかは考えません。ただ、その言葉に従ってしまうだけです。
「考える」ことが、「どう生きるか」につながる。そう、わたしは信じます。
この本は、現代の教育に疑問を持つ著者が中学生へ向けて書いた本です。自分を取り巻く様々なことについて「考える」ことの大事さを説いています。
でもね、「考えない」ことがどんなに恐ろしいことなのかを知るために、大人にこそ読んで欲しい本なのです。
3335冊目(今年309冊目)
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