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『仙台ぐらし』 伊坂幸太郎 24-306-3332

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仙台ぐらし

伊坂幸太郎(いさか こうたろう)

集英社文庫

本書は2012年2月、荒蝦夷より刊行されたものを文庫化したものです。

 この本には2005年から2015年までに書かれた「タクシーが多すぎる」「見知らぬ知人が多すぎる」など「多すぎる」をテーマにしたエッセイと、9.11東日本大震災後の暮らしのことを書いたエッセイ、そして短篇小説「ブックモビール」が収録されています。

 この本の最後に「荒蝦夷(あらえみし)」の土方正志さんと伊坂さんの対談「『仙台ぐらし』の舞台裏」が収められいます。この2人の会話はまるで伊坂さんの小説に登場する人たちのようで、とっても楽しいのです。

 

このエッセイ集は基本的に、仙台の出版社、荒蝦夷で発行している雑誌『仙台学』に掲載していたものをまとめています。エッセイが苦手な自分でも「エッセイに見せかけた作り話」であればどうにかなるのではないかと思い、引き受けたのですが、まったくもって甘い考えでした。「エッセイに見せかけた作り話」が簡単に思いつくわけがなく、結果的に、殆どが実話をもとにしたものとなっていますし、それにしても四苦八苦して書いたものばかりです。半年に一度、このエッセイの〆切がやってくると、「さてどうしようか」と頭を悩ませていましたので「十回連載」という約束が果たせたときには本当にほっとしました。

 エッセイには伊坂さんの、気弱な面が随所に登場します。北朝鮮からロケットが飛んで来たらどうしよう? 喫茶店で仕事をしている自分が「伊坂幸太郎」であると気づいている人が結構いるんじゃないか? 自分が書いた作品が映画化され、それを見た人がファミレスの隣の席にいて、感想を話しているのが気になってしょうがない・・・などなど、実に面白いのです。

 そして、東日本大震災後、仙台もそれなりな被害があり、停電が続いたり、いつも買い物に行っていた店が閉まっていたり、不安な気持ちが広がった記録として、とても貴重なものだと思います。

 今だからこそ冷静に読めるけど、余震も続いていて不安だったあのころの事を、いろいろと思い出しました。いろんな意味で、いつもの伊坂さんとは違う感じの文章を、楽しむことができました。

3332冊目(今年306冊目)

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