『雪とパイナップル』 鎌田実 24-283-3309
「ひとりの子の涙は、人類すべての悲しみより重い」
1986年4月26日、チェルノブイリ原発事故が発生しました。当時のウクライナはソビエト連邦に属しており、ソビエト政府はこの事故を発表しませんでした。しかし、スウェーデンがこの事故を発見し、国際原子力機関(IAEA)に事態を報告し、やっとチェルノブイリ原発で事故が発生した事実を認めたのです。
国が事実を隠していたせいで初動がすべて遅れました。避難も遅れ、これからどんなことが発生するのかを人々に通達することも遅れてしまったのです。
ベラルーシはチェルノブイリのすぐ北側で、放射能汚染を強く受けました。赤ちゃんの時に黒い雨にあたってしまったアンドレイは白血病になってしまい、余命いくばくもない状態になってしまったのです。日本からやって来た看護師のヤヨイさんは、アンドレイが食べたいと言っていたパイナップルを求めて、零下20度の町を探し歩きました。その話を聞きつけた親切な人のおかげで、パイナップルの缶詰が手に入ったのです。
アンドレイはパイナップルを食べることができ、少し元気になりました。でも、病魔は去ってくれず、彼は亡くなりました。
事故直後、すぐに避難していたら、黒い雨の怖さを知っていたら、すぐに専門医に見てもらえたら、彼は死なずに済んだかもしれません。
都合の悪いことはなかったことにしようとする国のために、こんなことが起きてしまったのです。
原発事故も、戦争も、みんな人間が引き起こしたことです。そのために苦しむのは、いつも普通の人たちなのです。こんなことが、二度と起きない世界であって欲しいと祈るけど、それが空しいと感じてしまうのは、とても悲しいのです。
3309冊目(今年283冊目)
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