『ブラック・ボーイ 上』 リチャード・ライト 24-297-3323
先日読んだ「ぼくの図書館カード」という絵本に感銘を受け、その元となっているこの本を読むことにしました。
20世紀初頭のアメリカでは、黒人であるというだけで、ありとあらゆる場所で差別を受けました。それはもう、想像を絶する状況です。
学校の友人から薦められて新聞配達をして、ちょっとお金を稼げるようになったころ、その新聞をとっている男性から聞かれました。「きみは、この新聞を読んだことがあるのかい?」 いいえと答えると、「この新聞の内容を知らずに配達してるのかい。だったらそれはまずい。この新聞はKKKが出している新聞なんだ。黒人のきみがこれを配達してはいけないと思う。」と言われたのです。リチャードはその時初めてその新聞を読み、この男性が言っている意味がわかり、すぐに新聞配達を辞めました。
リチャード少年が、ある白人の家で働かせてもらおうとすると、そこの奥さんが「お前は盗みをするのか?」と聞いてきました。リチャードがクスッと笑ったら怒られました。「だって、盗みをしようとする人が、わたしは盗みをしますなんて、いうわけがないでしょう」と答えたら、「黒人が生意気なことを言うんじゃない!」と声を荒げて怒られたのです。彼は初めて、こういう時には「盗みはしません、奥さま」という答えしか求められていないのだということを知ったのです。
リチャードの周りには訳の分からない人ばかりいて、家族や学校の先生からもわけが分からない圧力を受けます。行儀が悪いといっては叩かれ、生意気なことを言ったといっては蹴られ、黙っていれば反抗的だといって鞭打たれてしまうのです。
たぶんリチャードは子どもの頃から「知りたい」という欲求が強い子だったのでしょう。疑問を持ては「どうしてなの」を聞きたくなります。でも大人たちはちゃんと答えてくれず、怒り、暴力で押さえつけようとするだけでした。
社会も、教会も同じでした。ただ言われたとおりに従えと命令するだけなのです。
リチャードはついに家を出る決心をします。
この物語は100年前の話ですけど、今でも基本的なところは変わっていないのだろうと思います。そうでなかったら「Black Lives Matter」なんて運動が生まれるわけがないのです。
この本の中には黒人社会のつらさや、あきらめや、神にすがるしかない気持ちや、貧しさゆえの悲しさが満ちています。そこから抜け出そうとするリチャードは、周りから浮いた存在として扱われてしまいます。そこがとてもくやしいのです。もっと違う選択肢があるはずなのに、大人しくそこにいろと強制されてしまう人生なんて嫌だと思い、行動に出たリチャードは、どこへ向かっていくのでしょうか。
白人から黒人へ、大人から子供へ、自尊心を叩き、従順にさせようという魂胆はどちらも同じで、そんな人間の在り方は間違っているということを、彼はこの時点で良くわかっていたのでしょうね。リチャードの未来に幸あれと祈ることしかできません。
3323冊目(今年297冊目)
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