『その時、ラジオだけが聴こえていた』荒蝦夷、IBC岩手放送 24-312-3338
2011年3月11日に発生した地震によって、これまでに誰も経験をしたことがない大津波が押し寄せ、甚大な被害を生みました。電気が止まり、ネットもつながらない状況で、人々に情報を伝えるためにICB岩手放送の方々は、108時間ノンストップでラジオ放送を続けたのです。
電気が止まってしまったのでテレビを見ることはできません。こんな時だからこそラジオ放送だったのです。
最初はこの震災の状況すらよくわかっていませんでした。でも、状況が少しずつわかってくるにつれ、とんでもないことが起きているということが分かってきたのです。そして、ラジオだからこそできることを見つけ出していったのです。
まず、多くの人が知りたがったのが、家族などの安否です。そこで、どこの避難所には誰がいるという情報を集め、一人ずつの名前を読み上げていったのです。放送を聞き逃した人の為には、インターネットで情報を見ることができるようにもしました。
そして、家や避難所でラジオを持っていない人が多いことに気づき、「被災地にラジオを送ろうキャンペーン」を行いました。避難所で寒い思いをしている人のためにカイロや食糧を集める呼びかけもしました。
地震からしばらくしてからも余震が続いていたので、作業をする人たちは車のラジオをつけっぱなしにして、避難指示が出たらすぐに逃げられるようにしていたそうです。
心細い状況でいる人たちが、いつも聞きなれたラジオから聞こえる声に助けられたという声をもらいました。
後からわかったことですけど、最初の頃の放送では、アナウンサーの方は実際どんなことが起きてしまったのかの映像を見ていなかったのだそうです。でも、それがよかったと言っています。知らなかったから冷静に話すことができたのだと。
テレビやNHKの放送は、どうしても東京中心のニュースになりがちでした。でも、被災地の人たちにとってはそれは邪魔な情報なのです。それよりも大事なこと。安否情報、支援物資、道路の状況、自分たちに必要な情報が欲しいのです。だからこそローカル局が役に立ったのです。
あの日、わたしは渋谷にいて、携帯電話もインターネットも使えないことに驚いていました。情報が欲しくて、渋谷パルコにあったFM東京のサテライトスタジオへ向かいました。そこで聞いた放送は一生忘れられません。「津波が来ます。とにかく高い所へ逃げて下さい」
その時は、それがどんな意味であったのかが分かりませんでした。
あの頃よりもラジオを聞いている人は減っていると思います。でも、いざという時にはラジオなのだということを忘れてはいけないのです。災害は忘れた頃にやってくるのですから。
3338冊目(今年312冊目)
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