『夢をかなえるゾウ 0(ゼロ)』 水野敬也 24-327-3353
ガネーシャが今回見つけたのは、会社に行くのが嫌で嫌でしょうがない男性です。大嫌いな上司の顔を思い浮かべただけで憂鬱になっています。ガネーシャが彼に「夢はないのか」と聞くと、「何もありません。とにかく今の生活から抜け出したいだけです」という返事なんです。
自分はな、会社でも学校でも家庭でも、周囲の評価を気にして生きてきたんや。会社も、学校も、済む家も、服装も、付き合う異性も、趣味も、食べ物までも、「人から認められるか」「人が欲しがるものか」で選んできた。そして、そういう生き方を続けるうちに、人からの評価を優先するのが当たり前になってもうた。やりたいことやのうて「やるべきこと」を優先することで、自分の気持ちがわからへんようになってもうたんや
ほんまの好きいうんは、他の人間は一切関係ないねん。「世の中の人全員が嫌いだと言っても、自分はこれが好きだ」って言えるもんが、ほんまの好きやねん P141
彼は、大嫌いな上司から逃れるために会社を辞めたいけど、特に何をしたいということがないので、次へ進めないというジレンマに陥っているということはわかったけれど、こんな自分でも夢って持てるのかなという疑問を持ちます。
どんな人間にも、短期の欲求は存在しちゅう。つまり、「やりたいことがない」「夢がない」という人にも欲求がないわけじゃないきに。ただ、途中のしんどいことを乗り越えたり、わざわざ面倒なことをしてまで満たしたい欲求がないちゅうことじゃ P240
おなかがすいたら何か食べたいとか、眠くなったら寝たいとか、短期の欲求は誰だって持ってます。でも、長期的な欲求(お金持ちになりたいとか、彼女が欲しいとか)を満たすにはそれなりの努力や積極性がいるのに、そこを面倒くさがっているだけじゃないかとガネーシャは断言するのです。
ガネーシャは、エライ神様だけど、エライわがまま。そのパワーに振り回され、少しずつ自分を取り戻した主人公は、ガネーシャの痛い所をついてしまいます。
ガネーシャは、なぜ頭がゾウなのか?
ガネーシャとお父さんのシヴァ神との関係は、ムムム、これは深い話だ!
いつも通りの豪快なところと、実は繊細な人なのよというところを併せ持つガネーシャ、そしてペットとして大事にしているバクくん。このコンビが大暴れのこの作品、ちょっと長過ぎだよ~とツッコミを入れつつも、笑いながらいろんなことを考えさせられました。
3353冊目(今年327冊目)
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