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『誤作動する脳』 樋口直美 24-314-3340

Godousasurunou

誤作動する脳

シリーズ ケアをひらく

樋口直美(ひぐち なおみ)

医学書院

 わたしたちが認知症と思っている症状は、主に「アルツハイマー型認知症」のことですが、樋口さんの場合は「レビー小体型認知症」です。どんな症状が出るのかをこの本の中で説明してくださっているのですが、それがとにかく多岐にわたるのでビックリしてしまいました。

 幻覚、幻視が起きる、大きな音や強い光に激しく反応してしまうこと。臭いがわからなくなる。時間の認識がなくなる。睡眠障害。身体が異常に冷える。そして、お風呂に入っても暖かさを感じない。何かの音に気を取られると、それ以外の音が全く聴こえなくなる。

 脳が誤作動することによって、全身のあらゆる場所に困った症状が起きてしまうのです。かつては出来ていたことができなくなってしまっていることに困惑し、それを他人に知られまいと頑張ってしまうことで、大きなストレスを生み、それが症状をさらに悪化させてしまうという悪循環が起きてしまうのです。

 そこにいるはずのない人や虫などが見えてしまったり、衣類の柔軟剤の匂いなどの化学物質を吸い込むことで頭痛や吐き気をもよおしたり、簡単な作業でも、その順番を覚えられなかったり、訳の分からないことが発生して、パニックを起こします。でも、それを説明しても、なかなかわかってもらえません。

 医師ですら、その症状が何であるのかを、的確に指摘することができません。樋口さんは、最初の診断では「うつ病」と診断されていました。そして処方され、飲み続けた薬は、症状を良くするどころか、さらに悪化させてしまっていたのです。

 

 樋口さんがこの本の中で挙げている症状のいくつかは、わたしも体験したことがあります。人が話をしている声が大きく聞こえる場所では、わたしは何かを考えることも、文章を書くこともできません。目の中に黒い点が見えることはよくありますが、黒いテープのようなものが流れて見えたことが1度ありました。あれは、焦ったなぁ。だから、樋口さんの症状は他人ごとには思えないことがたくさんありました。

 

 匂いが分からないし、作業手順が良くわからなくなった状況で食事を作っていたのは、それはそれは苦痛だったでしょうね。誰かがいて、手助けしてもらえるという安心感があれは、かなりストレスが軽減されるというのは、重要なポイントです。つまり家族の協力が大事ってことなんだけど、自分が何に困っているのかを家族に話せないことが多いというのは、悲しいなぁ。

 そこにあるのは使命感かもしれないし、家族の無理解なのかもしれないし、とにかく「思い込み」が邪魔をしてるなと感じました。できないことは「できない」と言えばいいんだし、助けて欲しいときには「助けて」と言えばいいのに、それができないのはつらい。

 

 「レビー小体型認知症」は「アルツハイマー型認知症」に次いで2番目に多い認知症なのですが、一般にはまだまだ理解されていません。体調によって、認知機能の良いときと悪いときの波があるということも、理解されにくい要因でもあるようです。

 認知症の早期発見は無理ということを考えると、こういう症状もあるのだと知っておくことの大事さを痛感します。わたしだって、明日そうなるかもしれないんですから。

3340冊目(今年314冊目)

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