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『異次元緩和の罪と罰』 山本謙三 24-349-3375

Ijigen

異次元緩和の罪と罰

山本謙三(やまもと けんぞう)

講談社現代新書 2753

世界各国は中央銀行による財政ファイナンスを禁止するとともに、中央銀行の独立性を尊重する制度を設け、政府と中央銀行の間の一戦を画すよう努めてきた。異次元緩和はこの一戦を危うくするものだった。財政一つとってみても、異次元緩和の出口には隘路(あいろ)が待ち構えている。(まえがき より)

 マイナス金利、ゼロ金利政策が長く続き、2024年7月にようやく、日銀は政策金利を0.25%に利上げしました。といっても、この金利は世界的に見て異常に低いのです。銀行の普通預金に利息が付いたのを始めて見たという平成生まれの人もいたくらいです。この低金利が円安を呼びます。円安は輸出業にとっては追い風かもしれませんけど、日本は生活に関するほとんどのものを輸入に頼っている国ですから、円安の影響は生活を直接脅かしてきます。

 円安によって株価が上がるからいいだろうという人もいますが、株価が上がったからって普通の人の収入が増えるわけではありません。それよりも円高になって小麦や原油価格が下がる方がずっといいんです。

 

黒田前総裁は、異次元緩和の出口戦略を質問される度に、時期尚早として回答を避けたが、植田日銀も、出口戦略に関する長期ビジョンを未だ示せずにいる。異次元緩和はそれほど後先を考えずに続けられた政策だったように見えてならない。P73

 黒田前総裁は、結局10年間何も変えずに植田新総裁へバトンタッチしていきました。なのに退任してすぐに叙勲って、わたしにはブラックジョークにしか思えませんでした。

海外からの観光客が日本で安くサービスを受けられるのは、国内の労働力が円安の結果安売りされているからにほかならない。観光業に従事する人々の収入が増えても、その収入で海外から買えるものは減っている。これが円安のマイナスの側面だ。P151

 インバウンドで経済を回るからいいじゃないかという人もいます。でもオーバーツーリズムのせいで生活しにくくなった地域もあります。インバウンドで稼ぎたくても従業員を確保できないところもあります。なのに海外から買うものはすべて値上がりです。円安を喜んでいる場合ではありません。

 

模式的に言えば、1日8時間働く正規雇用者1人に変えて、1日4時間働く非正規を2人雇用する方が1人当たりの賃金は低くなる。この場合、パートタイム労働者の賃金が大幅に上昇しても、加重平均した全体平均の伸び率は低くなる。P178

 フルタイムで非正規の人だって大勢います。非正規で人件費を押さえようという考え方が、平成以降急速に広まりました。非正規労働は、その時に得る賃金が少ないだけでなく、老後の年金にも関わってきます。

 円安や非正規労働で、生活が苦しい人が増えているのに、何もできない政府と日銀。日本の舵取りはいったい誰に託せばいいのやら?

3375冊目(今年349冊目)

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