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『経済成長という病』 平川克己 24-350-3376

Keizaiseityoutoiu

経済成長という病

退化に生きる、我ら

平川克己(ひらかわ かつみ)

講談社現代新書 1992

エマニュエル・トッドらの人口学者によれば、地域ごとの民主化の進展と識字率の上昇によって女性の社会進出が旺盛になり、同時に出生率が低下してくることが指摘されている。つまり、社会の発展と人口減少は密接な相関関係にあるということである。にもかかわらず、人口が減少すれば、総生産力も総需要も減退する。だから人口を増やさなければならない、人口を増やすためには、何がなんでも経済成長を維持し、社会不安を払拭してゆかなければならないというは、まったく本末転倒した話ではないのか。

人口が減少する。経済が均衡する。これらは、原因ではなく結果である。
すくなくともそのように考える余地を残しておくべきだろう。
もし、そうだとすれば、経済が右肩上がりを止めた後の社会の作り方というものを、冷静かつ具体的に構想しておくべきではないだろうか。P69

総務省の統計によれば、日本では1970年代より出生率が低下しはじめ、人口は2005年をピークに減少に転じている。~中略~このままでは総人口は減少を続け、2050年には8997万人まで減少するとされている。実に三割の減少である。

 この本が出版されたのは2009年、リーマンショックの次の年です。この段階でこれだけのことがわかっていたのです。そこから考えるべきなのは、経済成長ではなく、少なくなった人口でどう生きていくのかです。日本の人口について調べてみると、明治維新の頃の人口が約3300万人、1936年(昭和11年)の人口が7000万人、1967年(昭和42年)に1億人突破です。

 2050年の人口として予測されているのは約9000万人。現在の予測では、それより若干多めの9,515万人、第二次世界大戦前の人口よりはるかに多いのです。このサイズでやっていくしかないのです。老人人口が多いのが問題だと言われていますけど、それは先進国すべてに当てはまることで、日本がその先頭を切っているだけです。

 経済成長のために、わたしたちはずっと無理をし続けてきました。大量消費が素晴らしいことだとか、オリンピックや万博をぜひやるべだとか、長時間労働やサービス残業が美徳だとか、安い製品をつくるために安い労働力の地域へ生産拠点を移すとか、わたしたちがやりたくないことは外国人労働者にやってもらおうとか。

 そういうことのツケが回ってきたのです。生産拠点を国外へ持って行ってしまったために国内生産が空洞化してしまったり、円安で日本から逃げ出す若者が増えたり、非正規労働者が増えたり、いろんな不都合な事実が山積みです。

 

人口減少は経済成長を鈍化させる原因なのではなく、経済成長の結果なのである

 終章で語られたこの言葉に、妙に納得してしまいました。この現実を受け入れること、そこからしか未来は見えてこないのです。

3376冊目(今年350冊目)

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