『異郷被災 東北で暮らすコリアンにとっての 3.11』 24-344-3370
東日本大震災は未曾有の災害でした。その時、東北で暮らす多くのコリアンが被災したのです。彼らがその時にどんな体験をしたのかをインタビューしていったのですが、彼らが話してくれたのは、被災体験だけではありませんでした。
ひと口にコリアンと言っても、実は様々な人がいます。在日一世、二世、三世、と言った人たちだけではないのです。「ニューカマー」と呼ばれる最近やって来た人たちは日本語もよく分からないし、近所付き合いもないような人たちがほとんどでした。ですから、「津波が来ます、避難してください。」という呼びかけにも、それがどういう意味だか分からなかったという人が大勢いたのです。
在日二世、三世で、日本に帰化した人もいて、コリアンとしての結びつきが希薄になっていた人もいました。
でも震災の後、全国の民団(在日本大韓民国民団)から多くの人がやって来て、多くの物資や義援金を届けてくれたのです。たとえ民団に属していない人でも、被災した同胞を助けるのは当り前だというスタンスでした。そして、彼らと同じ地域に住む日本人にも同じように救いの手を差し伸べてくれたのです。
このインタビュー集は、被災後の話だけではありません。その人の、それまでの人生も語られています。仕事を求めて日本にやって来て、いい伴侶に巡り合えた人。親戚などの紹介で日本にお嫁に来た人。広島や東京から東北へやってきた人。実に様々です。そして、みんな頑張ってきたのです。
日本人男性と結婚したコリアン女性の話で、とても悲しい話がありました。日本人と結婚している間は配偶者ビザが適用されますが、夫が亡くなってしまって、残された妻は「配偶者が死亡した日から6か月以内に在留資格変更申請をしなけらばならない」と言われたのです。こんな非常時にそんなこと言われたって、役所だって流されてしまった状態なのにどうしろというの!と思いました。
年老いた夫の両親の面倒をずっと見てきたのに、夫が亡くなったとたんに親戚がやって来て、「すぐに家から出ていけ」と言われた女性もいます。この方は行政書士の力を借りて、このトラブルに対処していましたけど、こんな酷いことをする人がいるなんて!
被災後、同胞意識が再確認されたように感じるという話、隣近所のつき合いが大事だという話も多くありました。普段は忘れがちな、お互いを思いやる、助け合うという気持ちがこの本にいっぱい詰まっていました。
3370冊目(今年344冊目)
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