『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』 三宅香帆 24-366-3392
働いているから忙しい。だから本が読めないという構造は、何なのだろうと三宅さんは考えます。そして、そればいつごろからそうなったんだろうということも考察していきます。
本が一番売れていた頃、それにはちゃんと理由があったのです。まずは人口が多かったということ。そしてTVの影響でベストセラーが生まれたこと。みんなが同じ方向を向いていた時代だったからこそ、流行に後れまいとして本を読む人が多くいたのです。
今の時代は、人口は減る一方だし、みんながこぞって見ているメディアなんてありません。それに、それぞれが自分の好きなことしか見ていません。ですから、ベストセラーは生まれにくいし、そもそも読書以外の楽しみがいくらでもあるんです。
でも、だからこそ本を読んで欲しいという三宅さんの願いは、とてもよくわかります。
自分から遠く離れた文脈に触れること ー それが読書なのである。
彼女自身、就職してしばらくは読書時間が減ってしまって愕然としたのだそうです。読書をするために仕事を変えたというのは、勇気ある決断であり、ひとつの提言だと思うのです。仕事のために、自分が好きなことをできなくなるなんて、そんなことがあってはいけない。
本を読むことで時空を超えた体験ができるのです。そこでは、普段生きている世界では想像もできないことが見つけられます。それを知って欲しいから三宅さんは熱く語るのです。
自分のことを考えてみると、確かに就職してからは学生時代ほどは読めなくなりました。でも、読書時間が減りはしてもゼロになったことはありません。忙しく働いていたころもありましたけど、通勤時間とか、ちょっとした待ち時間とか、読書する気があれば時間は何とか捻出できます。
そういう時間が捻出できないほど働いている人がいるという日本って、本当に先進国なのかなぁ。そこまで追い詰められたら、生きているのがやっとということですよね。自分は明日倒れるかもしれないという危機感を持って欲しいのですが、そういう想像力も持てなくなっているのだとしたら、余りにも怖い状況です。
#なぜ働いていると本が読めなくなるのか #NetGalleyJP
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