『生物と無生物のあいだ』 福岡伸一 24-360-3386
この本の中で、動的平衡(どうてきへいこう)という言葉が何度も登場します。福岡氏いわく、生命は「動的平衡にある流れ」であり、絶えず分解と合成を繰り返しながら、自らを作り変えているという考え方です。
わたしたちの身体はずっと同じであるように見えても爪や髪は伸びています。身体の細胞は常に壊れ、再生されているからです。
言い方を変えれば、「ゆく河の流れは絶えずして、しかももとの水にあらず。」なのです。会社でも、人間関係でも同じようなことが起きているのです。そこにいるメンバーは変わっていっても、学校や会社は存続するというような感じでしょうか。
ですが、毎日表面を見ていただけではその変化はわずかですから、何が変わったかに気がつきません。でも、しばらく目を離していて、数年後に見たときには、あっと驚く変化があるのです。「この間生まれたばかりだと思っていたら、もう小学生!」のように。
人間は必ず死にます。そして、別の人間が生まれます。そう、細胞が壊れ、再生するのと同じように。そうやって人間社会は存続しているのです。
福岡さんはニューヨークからボストンへ研究室を移動したことがあります。その時にボストンは静かだと気がついたのです。ニューヨークのマンハッタン島は岩盤層の上にあり、地上での動きがこの岩盤層に反射し、街に静かに響き渡っているというのです。この文章にハッとしました。確かに、車が走る音、建築工事の音、人の声などが混ざり合い、反響し合い、マンハッタンには何とも言えないノイズが24時間存在しているのです。それが人々に高揚感を与えているのではないかという福岡さんの考察に、思わず「うむ」と頷いてしまいました。
それと比べてボストンが静かだというのは確かです。土が見えるところが多いし、高層建築もさほど多くないので空が広いというのも、静けさの一因なのかもしれません。
研究に没頭しながらも、そういうことを感じている福岡さん。こういう感性が研究に一役かっているのでしょうか。
講談社現代新書創刊60周年 第2部全国の書店員がすすめる「現代新書、この60冊」で圧倒的に多くの推薦を集めていたこの本は、生物学というよりも哲学の本であるような気がしてなりません。
3386冊目(今年360冊目)
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