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『楽園のカンヴァス』 原田マハ 25-16-3412

Rakuennno

楽園のカンヴァス

La toile du Paradis

原田マハ(はらだ まは)

新潮文庫

第25回(2012年)山本周五郎賞 受賞

一万円選書 の中の一冊

 ニューヨーク近代美術館(MoMA)でキュレーターとして働くティム・ブラウンの下に、スイスの大富豪から招待状が届いた。実はこの美術館のチーフ・キュレーターはトム(Tom)・ブラウンで、一文字違いのティム(Tim)には、良く間違った手紙が届くことが良くあったのです。だから、これは間違えて届いたのだろうなと思いつつも、自分が愛するルソーの絵を見て欲しいという依頼に心が動きました。これは、行くしかない!

 彼が大富豪から見せられた絵は、MoMA に所蔵されているルソーの夢とそっくりな「夢をみた」という絵でした。この絵の真贋を見極めてほしいというのです。そして、もう一人同じ役目を依頼された、早川織絵というパリからやって来た研究者も同席していました。

 ふたりは、この絵の手掛かりとなる文章を読むことになります。そこには、ルソーの物語が書かれていました。

 

 ルソーの絵は、彼が生きていた時代には殆どの人から「ヘタ」と評価されていました。元々日曜画家だった彼の絵は、それまでの常識から見ればデッサンはなってないし、絵のモチーフもそれまでの絵画とは全く違っていて、下手な絵を描く「税関吏ルソー」と揶揄されていたのです。

 彼の色彩感覚や独特の世界感を認めたのは、あのピカソでした。彼もルソーの影響を受けたと言われています。

 

 ルソーの絵に心惹かれ、人生を賭けてきたティムと織江、ふたりが読んだ物語はルソーを愛する者にとって、驚きもあったでしょう。そして、心を揺さぶられたでしょう。

 この本の表紙になっている「夢」。この絵を見ているうちにこの物語が生まれたのでしょうね。そんな不思議な力を持った絵です。この物語に登場した「夢をみた」が本当にあったら是非見てみたい、そんな夢をみたような気持ちです。

3412冊目(今年16冊目)

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