『江戸デザイン学。』 ペン編集部 25-15-3411
浮世絵という名前が示す通り、浮世(世の中)の日常を切り取った絵です。決して高級な絵画ではなく、風景や人々を写し取ったポスターのような感覚で作られています。
そんな庶民の為のものである浮世絵がすごいのは、まずは絵の構図です。ただ景色を描くのではなく、窓越しの景色であったり、屋内の様子でもそこにいる女性の着物の裾だけで、その人がどんな人なのかわかってしまうような描き方なのです。
「真乳山山谷堀夜景」は、提灯を持った下男の後ろを歩く女性の絵なのだけれど、提灯を持つ男は見えていない、そういう思い切った構図であったり、歌舞伎の大首絵のようにクローズアップの構図だったり、そういう絵だからこそ見ている人の想像力を掻き立てるのです。
そして、江戸が特筆すべきなのはその識字率の高さです。字を読めるということは、本を読む人が大勢いたのです。本を買うと高いので、貸本で本を読む人が大勢いました。瓦版だって、字が読める人がいるからこそです。
本だから字だけと言わけではなく、面白い挿絵があったり、マンガのようなレイアウトがあったりして、ビジュアル的にも楽しい本がたくさんありました。
庶民は贅沢をしてはいけないという決まりがあったので、たとえお金持ちでっても表は地味な服でした。でも裏は色物を使ったり、豪華な柄物だったり、見えないところにお金をかけていたので、こういうデザインに携る職人もさぞかし多くいたのでしょう。
手ぬぐい、ポチ袋、千代紙などの小物のデザインはもちろん、広告に関するデザインもたくさんありました。
この本では銭湯の洗い場の広告の話がありましたけど、昭和の頃の銭湯でも同じように広告が沢山ありました。最近はめっきり広告は減りましたけど、家の近所の銭湯の脱衣所には「家のリフォーム」の広告が出ていましたよ。
江戸のデザインは、今見ても新鮮なものばかりです。温故知新とは、こういうことをいうのでしょうね。
3411冊目(今年15冊目)
« 『複雑な彼』 三島由紀夫 25-14-3410 | トップページ | 『楽園のカンヴァス』 原田マハ 25-16-3412 »
「デザイン・アート・写真」カテゴリの記事
- 『江戸デザイン学。』 ペン編集部 25-15-3411(2025.01.17)
- 『ウィローデールの手漕ぎ車 またはブラックドールの帰還』 エドワード・ゴーリー 24-357-3383(2024.12.17)
- 『BANKSY IN NEW YORK』 Ray Mock 24-346-3372(2024.12.06)
- 『路上のセンス・オブ・ワンダーと遙かなるそこらへんの旅』 宮田珠己 24-328-3354(2024.11.18)
- 『家をせおって歩く かんぜん版』 村上慧 24-295-3321 (2024.10.16)
「日本の作家 は行」カテゴリの記事
- 『江戸デザイン学。』 ペン編集部 25-15-3411(2025.01.17)
- 『また団地のふたり』 藤野千夜 25-10-3406(2025.01.12)
- 『楽園のカンヴァス』 原田マハ 25-16-3412(2025.01.19)
- 『黙って喋って』 ヒコロヒー 25-5-3401(2025.01.06)
- 『力道山未亡人』 細田昌志 24-361-3387(2024.12.21)
「江戸時代」カテゴリの記事
- 『平賀源内 「非常の人」の生涯』 新戸雅章 25-19-3415(2025.01.22)
- 『江戸デザイン学。』 ペン編集部 25-15-3411(2025.01.17)
- 『江戸の貧民』 塩見鮮一郎 25-13-3409(2025.01.15)
- 『まいまいつぶろ 御庭番耳目抄』 村木嵐 25-2-3398(2025.01.03)
- 『夜の金糸雀 おくり絵師』 森明日香 24-353-3379(2024.12.13)
« 『複雑な彼』 三島由紀夫 25-14-3410 | トップページ | 『楽園のカンヴァス』 原田マハ 25-16-3412 »
コメント