『楽園の楽園』 伊坂幸太郎 25-24-3420
人工知能「天軸」が暴走して世界がエライことになっていました。でも、この人工知能がどこに置かれているのかは、開発者である「先生」以外誰も知りません。「先生」が遺した絵「楽園」を手掛かりにして「天軸」を探すために指名された、五十九彦(ごじゅうくひこ)、三瑚城(さんごじょう)、超八隗(ちょうはっかい)は、旅に出ます。
感染症、地震、大規模停電、そういう現象が束になって世界を壊し始めるという設定は、物語の中では近未来っぽいけど、これは間違いなく今の世の中のことだと思う。
感染症も、地球温暖化も「ない」と言い張るどこかの国の大バカ者。病院であろうと学校であろうと、躊躇なく爆撃を行う冷血な奴。人種が違う、宗教が違う、身分が違う、そんなことを信じてる愚か者たちが世の中にワンサカといる。そんな世界に誰がした? そうだよね、人間だよ。
キリストの「汝の敵を愛せよ」という言葉も、マホメットの「力強いとは相手を倒すことではない。」という言葉も、ブッダの「もしも愚者が『われは愚かである』と知れば、すなわち賢者である。」も、彼らには関係のない言葉なのかなぁ。
自分は愚かであると気づけない愚者に世界を渡したら、神様たちは許してくれないよね。もう、人間なんかいらないって言われてもしょうがないところまで来ているのかもしれない。
「AI じゃなくて NI (Nature Inteligens)」という言葉がとっても気になる。そこで語られた喋る案山子って、オーデュボンの祈りに登場する優午のことだよね。一瞬だけど彼の姿が目に浮かんだ。
木の根っこや粘菌たちによる地下ネットワークが神とつながっているとしたら? もしかしたら、世界はその力で変わっていくのかもしれない。そんな小さな希望が残ったけど、世界はこれからどうなっていくんだろうという不安は大きくなるばかり。
3420冊目(今年24冊目)
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