『思考の穴』 アン・ウーキョン 25-34-3430
誰かがやったこと、言ったことに対して異議を感じた時、昔なら直接言うか手紙を書くくらいしかできませんでしたけど、今はSNSという便利なものがあるので、安易にバッシングをする人が増えています。後になってそれが間違っていたと解っても、撤回のしようがない場合もあります。自分にとっての正義をすべての人に当てはめようとするのは、他人のの考え方や人権を侵害することなのに、そういうことが減らないのは、自分は正しいという思い込みが、とても強力なものだからなのです。
結果が原因とあまりにもかけ離れていると感じると、明白な原因を原因として受け入れられないことがある。
たとえば、病気を説明するものとして最近の研究が初めて発表された時、多くの人はそれを信じがたいと感じた。というのは、細菌のような極小のものに、人間に害を及ぼしたり人間を殺したりできるほどの力があるとはどうしても理解できなかったのだ。P125
キュリー夫人は放射線の害を知らなかったし、野口英世は光学顕微鏡では見えないほと小さなウイルスによって亡くなりました。過去には知られていなかったこと、あるいは間違っていた考え方を覆す情報が世界に与えられていますけど、それを知らなかったり、誤解していたリすることが、たくさんあります。
それが真実だと信じて声高に反対を叫ぶ人たち、でも、それが本当に真実なのか検証しているのでしょうか? 誰かが言っているからというだけの根拠で叫んでいませんか?
何もしないことの代償の存在を忘れていては、取り返しのつかない問題が生まれかねない。
「正しい行動を起こすことを怠っていては、気候変動を止めることはできない」というのもその一例だ。P142
気候変動とか、人口減少とか、食糧危機とか、格差とか、その原因はわかってますよね。でも、わかりたくない人たちが大勢います。認めてしまったら、今自分たちがやっていることが正当化できなくなるからなのでしょう。そんな人たちには自分の子どもや孫の世代が、酷い世界で生きなければならなくなるという想像力がないのでしょうね。
人生ずっと信号の色を間違えていた
息子が私に、黄色信号は何故黄色信号と呼ばれているのかと尋ねてきたのだ。私は「黄色だから黄色信号って呼ばれているのよ」と答えた。すると息子はこう返した。「黄色じゃない。オレンジだよ」P245
わたしも黄色信号は「黄色」だと思い込んでいました。ええ~と思って、すぐに信号を見に行きました。黄色信号は卵の黄身のようなオレンジ色でした。こういう思い込みって怖いです。「男は青、女は赤」や「理系は男」のようなジェンダーバイアスも、思い込みです。
思い込みに邪魔をされて、真実を見逃していることがたくさんあります。そういうことを考えるキッカケを提示してくれたこの本はとても素晴らしいです。
著者のアン・ウーキョンさんの「シンキング」の講義を受けてみたいなぁ。
3430冊目(今年34冊目)
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