『戦争をくぐりぬけたおさるのジョージ: 作者レイ夫妻の長い旅』 ルイーズ・ボーデン、アラン・ドラモンド 25-43-3439
戦争をくぐりぬけたおさるのジョージ: 作者レイ夫妻の長い旅
ルイーズ・ボーデン 著
Louise Borden
アラン・ドラモンド イラスト
Allan Drummond
福本友美子(ふくもと ゆみこ)訳
岩波書店
Curious George(ひとまねこざる・おさるのジョージ)の作者、ハンス・アウグスト・レイヤースバッハと、後に彼と結婚するマルガレーテ・ヴァルトシュタインはハンブルグの生まれです。でも、2人が出会ったのはブラジルのリオデジャネイロでした。ブラジルの人にとってレイヤースバッハという名字は呼びにくいので、レイという名前に変えて創作活動をするようになりました。
レイ夫妻は新婚旅行でパリへ行き、そこがとても気に入って、サンマルトル地区で暮らすようになります。動物が大好きな彼らはサルやカメと一緒に暮らしていました。ハンスは動物たちをモデルにして絵本を書きました。その中には「フィフィのぼうけん」というサルが主人公のものもありました。
当時ナチスドイツが台頭していて、フランスへも進軍してきていました。もし彼らに捕まったら? ユダヤ人である2人はパリから逃げる手段を必死に考えました。逃げる人が余りに多くいて、列車も車も使えません。そこで2人は自転車で逃げることにしたのです。最低限必要な荷物の中に書き上げたばかりの絵本も詰め込んで、2人は必死に走りました。親切な農家の人の納屋に泊めてもらったり、野宿したり、必死にポルトガルまで走ったのです。
ポルトガルのリスボンから船でリオデジャネイロへ行き、そこから船を乗り継いでアメリカのニューヨークまで、2人は逃げ切ったのです。
そして、アメリカで本を出版できるようになりました。あの「フィフィのぼうけん」は「ひとまねこざる」として出版され、世界中の子どもたちに読まれるようになったのです。
この本の挿絵を見て気がついたのですが、「きいろいぼうしのおじさん」って、ハンスさんがモデルだったのですね。そしてジョージが自転車で走り回るお話は、自分たちの自転車で逃亡した記憶が反映されているようなのです。つらい時代のことも、そうやって楽しいお話に変えてしまったレイ夫妻の Curious George だと思うと、平和の大事さをひしひしと感じるのです。
3439冊目(今年43冊目)
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