『アンパンマンの遺書』 やなせたかし 25-53-3449
2025年4月からの朝ドラ「あんぱん」は、やなせたかしさんの妻が主役のドラマです。予習も兼ねてこの本を読んでみました。
やなせたかしさんは不思議な方です。たった一度しか会ったことがない方から仕事を依頼されたり、新しい企画を作って欲しいと要望されたりすることが、とても多いのです。「そんなこと、やったことありません」と断ろうとしても、きっとできるから大丈夫だと思って頼んでいるんだと言われ、本当にできてしまうということの連続なのです。
三越の新しい包装紙のデザインの話とか、お芝居の舞台装置の話とか、TV番組出演の話とか、どれもこれも「何でそんな話が自分に振られてくるのだろう?」と思うやなせさん。もしかしたら、「この人なら何とかしてくれそう」という希望を持ってしまう何かを持っていた人なのかもしれません。
そんな中でも、不思議でしょうがないのが「山梨シルクセンター」という小さな会社の社長さんとの出会いです。やなせさんの「詩集を作りたい」という夢を実現してくれたんです。そして「詩とメルヘン」という雑誌を出版するようになったのです。この会社は、後にサンリオと社名を変え、ファンシーグッズで有名になったことはみなさんご存じでしょう。
「詩とメルヘン」懐かしいなぁ。高校生の頃、毎月楽しみにしていました。こういう雑誌って他になかったんですよ。
わたしが、やなせたかしさんを知ったのは「まんが学校」というNHKの子ども向け番組でした。この番組に出るようになったいきさつも、この本の中で書かれてますけど、ご本人はやっぱり「何で自分なんだろう?」という気持ちでいたみたいです。司会は立川談志、今考えるととても贅沢な番組です。
そして余談ですが、三越時代の後輩の松永さんという方がお茶の水にある「レモン画翠」を作った方だというのは、初めて知りました。三越に果物を納めていた業者さんに薦められて、ジュース屋さんを始めたのがこの店の始まりだったというのは、面白いですね。
そして、富田さんという方を慕ってゲイの方が上野に大勢集まったというお話など、多彩な交友関係が楽しいです。
いろいろな仕事をしてきたけれど、これと言った代表作がなかったのに、70代になってからアンパンマンによって、大人気作家になってしまったやなせさん。いろんなところで「アンパンマンの先生だ!」と言われるようになりました。病院に入院した時にも看護師さんから「うちの子もアンパンマンが大好きです。また、来てくださいね。」と言われちゃうのだとか。
愛する奥さまを亡くされて、ガックリしていた時期にアンパンマンのアニメが人気となり、その後のやなせさんを支えてくれていたのかなぁ。自分の身を削って誰かを助けるアンパンマンこそが、やなせさんの理想だったのでしょうね。
波乱万丈な94年の人生をおくられた やなせさん、この本が文庫化されるにあたり、ごあいさつを書いてらっしゃるのですが、出版される直前にお亡くなりになり、文字通りこの本は「アンパンマンの遺書」となったのです。
3449冊目(今年53冊目)
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