『小さな声、光る棚 新刊書店Titleの日常』 辻山良雄 25-66-3462
辻山さんは、かつては大手の書店勤務をされていました。そこでは、頑張って働いていても、常に「雇われている」という感覚から逃れることができなかったようです。
2015年にJR中央線荻窪駅から徒歩10分のところに「本屋Title」を作り、今日に至っています。そうか、今年で10年になるのですね。それなりに軌道に乗った後にやって来たコロナ禍の時期の文章を読んでいると、あのころの事がいろいろとよみがえってきました。
店を開けたいけれど、開けることによって遠くからやって来るお客さんが増えたら、この地域の人たちにとって迷惑なのではないかと悩んだり、店は休業でも、運送屋さんのためにシャッターを少しだけ開けていたら、そこから入って来るお客さんがいたり、店に行くことができないからと通信販売の注文が増えたり、それなりに忙しく働けたのは、書店だったからこそなのでしょうね。
辻山さんは、自分と同じように個人経営している書店を訪れます。どこへ行っても感じるのは、みんなそれぞれの気持ちで、それぞれのやり方で本を愛し、書店を運営しているのだなという所でした。それぞれの個性があり、町に溶け込んでいる書店だからこそ、こんな時代でもやっていけるのだと。
本屋が近所にある町で育った子どもは、大きくなってもそれを覚えています。そこにこそ小さな本屋の存在価値があるのだ、という辻山さんの言葉がとても嬉しいです。
この本は、ウェブサイト「幻冬舎plus」に掲載された連載「本屋の時間」(2016年12月1日~2021年2月1日)から再構成されたものです。
〇気になった本
「服のはなし」 行司千絵
「誰にでも親切な教会のお兄さんカン・ミノ」イ・ギホ
「声めぐり」齋藤陽道
3462冊目(今年66冊目)
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